第296話 マドロール

ジェロが王級魔法の魔導書に夢中になっている間に、マドロールと奴隷商人が近くに来て、勢いで奴隷契約の主の変更まで実施されてしまった。


一緒に来ていたイドたちはジェロが望んでいない気配は感じたものの、客観的に考えると自分たちの主が貴族社会でこれから生きていくために必要なことと思われること、何かあっても犯罪奴隷という契約であるのでジェロの命令が絶対になる安心感もあり傍観している。


魔術師団の拠点を出る際、王級魔法の興奮が収まってきたところで隣にマドロールがついて来ていることに気づいて現実に戻るジェロ。

「あ、え、あ、これからよろしくね」

「はい、どうぞよろしくお願いいたします」

アルマティほどの美人ではないが、普通にどこかの看板娘や冒険者ギルドの受付には確実になれるであろう容姿であり、ジェロにしてみると人見知りが再発してしまう。

馬車に同乗して宿屋に戻るまで言葉を交わすことはなく、宿屋に戻ってもリスチーヌ達の追及が怖くて自室に逃げ込んでしまう。

『今日は王級魔法だけでなく、マドロールまで得られて良かったわね』

『いや、彼女の扱い、これからどうしよう……』

『慣れるまでは誰かに任せても良いんじゃない?レナルマン辺りなら上手そうだし』

『そうしようか』

『それよりも貴族の後継指名はどうするの?』

『あぁそんな問題も。イドにしようか。ま、死ぬつもりも無いし』


「はぁ、ジェロ様ったら。子爵という立派な貴族のご当主なんだから、胸を張って女奴隷ぐらい扱えれば良いのに。まぁそれがジェロ様の良いところなんだけどね」

「じゃあリスチーヌ、お前が面倒を見て色々と教えてやってくれるか?」

「執事的な話ならレナルマン、あなたの方が良いでしょ?」

「わかったよ。でも女性の買い出し等、ジョジョゼとアルマティも含めてお前たちで頼むな」

「そうね、分担しましょうか」

「皆様、どうぞよろしくお願いいたします」

ジェロの居ないところで、ジェロのことを分かっている家臣たちが良い感じに話をまとめていた。

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