第277話 魔道具製作の予備知識

ジェロが購入した本は、神代語の話以外に、もう一冊あった。

『ところで、もう一冊の方は?』

『あぁ、こっちは魔道具入門。いつか自分で魔道具も作れたら良いなぁと思って』

『ジェロの場合、魔道具と言っても1番の目的は魔法カードでしょ?』

『ははは、もちろん。ヴァルはこっちの知識もあるの?』

『付与したい魔法の魔法陣を魔石に刻印して作るのが基本で、スクロールや魔法カードの魔法陣のように魔石を砕いて混ぜたインクで記述する方が珍しい、などかな』

『その刻印を一応知りたいなと思ってね。最近、魔剣を含めて魔道具を見る機会も増えたし。あんな小さな魔法陣を魔石にどうやって刻むのかなと』

『付与魔法の≪刻石≫ね。魔石以外に魔法陣として刻む材料の魔銀(ミスリル)が必要ね』

『さすがヴァルだね。これを買う前に聞いておけば良かった』

『ま、概要程度の知識だから、その本には知らないこともあるかもよ』


実際に読み進めると、魔道具の作成、つまり恒久的な魔法の付与を行うためには鑑定の習熟も必要であることがわかった。

付与対象への理解が必要であり、自身が作成した物でない場合には中級以上の鑑定能力で鑑定しておく必要があるとのこと。確かに、ある片手剣(ショートソード)に炎の付与をしようとしても、そのショートソードの組成等も理解していないと、その炎で剣を痛めることになり得ると考えると納得はできる。

さらに、上級以上の魔法を付与する場合には上級鑑定が必要になるとのこと。


魔道具製作の予備知識を得られたジェロは、身近な魔道具である魔法発動体の指輪を見てみる。指輪サイズにはめられる魔石は極小であり、そこに刻まれた魔法陣はさらに小さいのだが、光魔法≪望遠≫の応用で何とか見ることはできた。今までに習得したどの魔法の魔法陣とも異なる物であり、なかなかに興味をひくものであった。

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