第232話 ルグミーヌ王国へ2
「私も御者が良いです。ジェロ様のお近くに」
ユゲットの攻勢を見たからか、着替えが終わったところでのリスチーヌからのアピールもあり、ちょうど良かったと御者を交代したコンスタンに馬車の中に入るように言う。
「俺に何か?」
「コンスタン、これを見て欲しい」
昨日、イドたちと買い出しに行った際に購入していた読み書きの入門書を差し出す。
「これは?」
「コンスタン、怒らずに聞いてください。今まで読み書きを学ぶ機会が少ないか無かったのではないですか?私は孤児院で育ち年下の子供たちに教える機会も多かったので、この移動の中で一緒に勉強しない?」
「え!?覚えも悪く力自慢の俺には不要と周りに諦められて来ました。きっと無理ですよ。無駄な時間になるのが申し訳ないですよ」
「いいえ、コンスタン。無駄な時間では無いです。まずはやってみませんか。もしかするとその先に魔法の習得の可能性もありますよ。皆さんが習得されていくのを横目で見てちょっと寂しくなかったですか?」
「そりゃ。仲間たちに置いて行かれたくないです。見放されたくないです」
「では頑張ってみましょうよ。幸いにルグミーヌ王国への到着にはかなり時間はあるようです。この人数の団体に、盗賊も魔物も襲撃は無いでしょうから、護衛なんて形だけでしょうから」
「ジェロマン様、すみません……」
「そこは謝罪ではなくお礼になって欲しいですね。では頑張りましょう!」
イドとレナルマンには昨日の段階で相談していたので、その2人から他のメンバからにも話され、騎馬による護衛任務についてはコンスタンに順番をまわさないよう考慮してくれる。
孤児院で様々な子供たちに読み書き計算を教えていたジェロにしてみると、すぐに集中力が切れて遊びだしてしまう子供たちに比べて、意志の強くなった大人相手に教えるのは簡単であった。さらに、読み書きが苦手と言っても大人になって生活しているので本当の基礎まで教える必要はなく、その日のなかでも成長を感じられる手ごたえがあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます