第231話 ルグミーヌ王国へ

王都から離れたところで使節団は小休憩となった。

国家としてのイベントである出発のセレモニーは終わり、正装から着替えるタイミングとのことである。


ユゲット、ジャクロエの2人が王女達への飲み物の差し入れの後に、ジェロのところにもやってくる。

「ジェロマン様、どうぞお飲み物です」

「え?私のことはどうかお気遣いなく。王女殿下、王子殿下のことだけに」

「そういうわけにはいきません。王女殿下たちの護衛隊長でもあるテルガニ男爵ですので」

『アピールが強くなったわね』

『どうしたら良いのか……』


「テルガニ男爵、こちらのお美しい方は?」

避けられていたはずのクロヴォン・タルブに声をかけられて驚く。

「はぁ、モージャンの街の領主ルベリート・バンジル・モージャン子爵のご令嬢、ユゲット・バンジル様と、モージャンの騎士ジャクロエ様です」

「ユゲット様、ジャクロエ様。こちらはこの度の護衛隊の王国魔術師団員のクロヴォン・タルブさんです」

「ジェロマン様、どうか私たちのことは呼び捨てでユゲット、ジャクロエとお呼びください」

「そんなわけには……」

「あ、あの。タルブ準男爵の嫡男、クロヴォン・タルブです。どうぞよろしくお願いいたします!」

クロヴォンが話に割り込んで挨拶をするが、ユゲットは失礼にならない程度にあしらい、

「ジェロマン様、ではまた次の休憩時に」

と去っていく。


「テルガニ男爵、なぜあんなに親しげなのですか?」

「モージャンから王都までの王女殿下たちの護衛、2週間の道程でご一緒しただけです」

「ではもっと長いルグミーヌ王国への道程で……」

クロヴォンの独り言に対して、周りからの目が生暖かい。

『ジェロが頑張らなくてもユゲットを奪われそうにないわね』

『俺は関係ないぞ……』

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