第207話 王国魔術師団指導員

魔術師団長ジルベール・ラロシェルが前日の王城での裏事情を話し出す。

「正直、コンヴィル王国は単独では軍事大国のムスターデ帝国に勝てる戦力はありません。しかも魔人が帝国に協力しているならば。ただ、ジェロマンさんがその魔人を2度も撃退、さらに一人は殺したことまで聞かれて国王は判断されました。帝国を叩き潰すことまで高望みするのではなく、ラーフェン王国を取り戻せる程度まで力を示せば、コンヴィル王国へ攻め入ることを躊躇するのではないかと。そこで皆の意識を変えるためにあのような芝居、筋書きになったわけです」

「内々のお話までありがとうございます」

「ここまでお話しさせて頂いたのでご理解頂けたと思います。昨日は冒険者ギルドさんに釘をさされましたが、魔術師団をお助けください」

「私はギルド職員を辞めるつもりはありませんよ」

「それは理解しました。魔術師団員に、ではなく非常勤講師という立場でお願いできないでしょうか」

「それはどのような立ち位置になるのでしょうか」

「都合の良いときにだけ団員へ魔法の指導をして頂くというものです。報酬はその都度ということにもなりますが。ちなみに報酬には何をご希望でしょうか」

「正直、男爵に叙爵されて今までに縁の無い金額を頂きましたので別の物が」

「ジェロマン様は魔法カードのコレクションをされております。また図書館などで魔導書の閲覧をされて新しい魔法の習得に励まれています」

「リスチーヌ!」

「いえいえ、貴重な情報をありがとうございます。そうですね、魔術師団では消耗品として触媒などは使用していますが魔法カードやスクロールは収集、使用しておりません。ただ魔導書には自信があります。なかなか使用する団員が増えないのが悩みなぐらいでして。もしよろしければ今からご覧になられませんか?」

「よろしいのでしょうか」

「ジェロマンさんに魔術師団へ興味を頂ける可能性があるのでしたら、ぜひともどうぞ」

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