第176話 雷撃魔法
盗賊との戦闘の後、ある程度は離れたところで休憩となった折、ジェロはようやく新たに入手した魔法カードをじっくり見る時間をとることができた。
『これは!』
『確かに古代魔術だったわね。上級風魔法≪雷撃≫ね』
『やっぱり。この美しさ……』
ヴァルに呆れられながら、古代魔術の複雑な魔術語に魅入られている。
『ヴァル、この文字を教えて。次はこの文字』
一通り理解して顔をあげるのを皆が待ってくれていたのか、その時点で再出発となる。
『どこかの商隊を襲った時の戦利品だったらしいから、どんな流通経路だったかはわからないのが残念だ』
『確かに古代魔術の魔法カードはめったに見ないわね』
『今は王女達の護衛だから途中の街でも、魔道具店や冒険者ギルドに寄って魔法カードを探すことはできないが、王都なら店舗も在庫も豊富だと期待して我慢するしかないと思っていたところに、思わぬ収穫だった』
『本当、嬉しそうね』
『やはり前世の世界では無かった魔法、それが自身でも習得できていくのが、ね。魔法カードというコレクター魂を刺激する物でもあるし。それにしても雷か。電気だな。プラスとマイナスの電位差を高めて、伝導性の良い金属を狙うのが良いのか。まずは静電気程度から魔力を増やして練習するか……』
「リリー、ジェロさんのあの魔法カードへの執着、情熱。あれが糸口かもしれないぞ、親密になるには」
「えぇ、そうみたいね。魔術語の勉強をしながら、そちらの商品の仕入れも充実させましょうね」
アナトマ父娘にしっかり見られていることには気づいていないジェロであった。
「ジェロさん、人を殺すことに慣れてきたのかな。落ち込んだ風に見えないけれど」
「いや、たぶん魔法カードに興味がいっているだけじゃないかな」
「そうか。しかし、それなりの強さに思えた魔法使いへの魔法勝負に対しても圧勝だったよな。味方で本当に良かったよ」
もちろん“ジェロ班”にも見られていることも気づいていない。
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