第167話 ラーフェン王国の廃村

「ドナシアン様、首尾は上々です!あ、いえ、ドナン様!」

「ここではドナシアンで良い。で?詳しく聞かせろ」

「あ、はい。すみません。どこの村も魔物被害が放置されてきたようで、我々が討伐すると村をあげての歓迎で。おかげで戦況などもペラペラと話してくれました」

「どんな感じなんだ?」

「やはりラーフェン王国軍はあちこちで撃破されたようで、ほぼほぼムスターデ帝国の支配に替わったようです。ただ、帝国兵は横暴なのと征服した領地の住民は二等国民として差別、虐げられているので住民感情はかなり悪そうです」

「ふむ。ならば、ゲリラ活動は有効そうだな?」

「はい、ドナシアン様の読みの通りですね」

「そうだろう!ガハハ」


ドナシアンは冒険者たちを率いてラーフェン王国に支援に来たが、既にラーフェン王国軍はムスターデ帝国軍に敗退しておりどこかの王国軍の陣営に参加という形を取ることが出来なかった。そこで自身の冒険者Bランクの腕も活かして、魔物退治をしながらゲリラ活動で帝国軍に被害を与えることを考えたのである。

ラーフェン王国に残る冒険者ギルドに自身が顔を出すときには、ドナンという偽名になりきっていない名前を使用している。

活動拠点にしているのは、コンヴィル王国にも近い廃村、奇しくもジェロたちがレイスやゴーストを退治した場所である。

「それにしても、あのジェロマンとかいう事務職員、レイスまで退治していたとは。俺の言う通りに魔法指導員になっていればもっと早くから活躍させられたのに。まったく馬鹿な奴だ」

「いつも裏方に逃げていた奴ですよね。本当に奴がやったんですかね?」

「いつの間にかジェロの取り巻きのようになったイドたちが退治した手柄を取ったのでは?」

「いや、イドはそんなつまらないことをする奴ではないからな」

「おい、お前たち、ここに居ない奴らのことはどうでもいいだろう?目の前の帝国軍に専念しろ」

「はい!」


脳まで筋肉の脳筋のドナシアンには、平時のギルドマスターより腕力を発揮できる現場の方が似合っているようである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る