第154話 王都への護衛依頼2

大広間から控えの間に戻ってきたところで、アンブリスから謝罪される。

「ジェロ、すまない。こんな結果になってしまって」

「いえ、逆に領主様に対してあれだけ粘って頂いてありがとうございました」

「ジェロさん、お受けするならジェロ班は付いていきますよ!」

「イドさん、ありがとうございます」

「ただ、先の話だと今回も少人数が良いのだろうな。また商人に化けるか。ただ、今度は馬車で2日ではなく2週間の長旅。途中でいくつもの街や村も通るなか、本物の商人の支援が無いと厳しいな」

メオンの発言で思い当たるのは、モージャンの街ではアナトマ父娘、ガニーではヤンクイユ商会の3人娘だけのジェロである。後者は事務方を知っているだけで、経営層と親密なわけでないので今回の依頼をできる保証はない。その思考の過程を見ていたのか、

「ジェロ、心当たりがあるようだな。まずは頼みに行かないか?」

とアンブリスが声をかけてくれる。



「もちろん、お引き受けいたします」

相談に行った先のアナトマからの第一声である。

「お願いしたのはこちらであるが、詳細の話の前にそんな即決で良いのか?」

「はい、もちろんモージャンで商会を構える私としてはモージャン領主様の案件、それをギルドマスター様もご一緒にご説明に来られたのでしたら断わるわけもありませんが、他ならぬジェロ様からのお話だからです」

「いくらオーク襲来で命を助けられたとはいえ、商人としての判断基準として良いのか?」

「流石はギルドマスター様。もちろん商人としての目線は別にあります。オークから助けられた際からの、ジェロマン様からの一人娘リリアーヌへの対応です。私は男子に恵まれないまま妻を亡くしました。後妻を迎える気もありませんし、商会は娘に継がせたいのですが、女当主では世間になめられます。商才のある婿を迎えるか、頼りがいのある方に後ろ盾になって頂くか。親のひいき目でなくても美人の娘に、助けたことを笠に着て無理に迫ることも無く女性に対して上から目線をとられないジェロマン様の性格、さらに短期間で銀級へまで昇格される実力、王族の方とご縁ができる運勢、いずれを踏まえても婿でも後援でもジェロマン様に期待しております」

『ギルドの美人受付嬢を含めて女性に対しては奥手なだけだよな。でも他はその通りだな』

との目線をアンブリスとメオンに向けられて真っ赤にうつむくジェロ。

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