第153話 王都への護衛依頼

言いたいことを言ったオンハルト・ラーフェン王太子が大広間を去っていく。

「モーネ王女殿下、よろしいのでしょうか」

「兄上様のご指示に従うしかありません……」

「そうですか、わかりました。お前たち、聞いていたな。王女殿下たちを連れて王都に行って貰えないか?」

領主であるルベリート・バンジル・モージャン子爵に対して、ギルドマスターであるアンブリスが代表して答える。

「王太子殿下を含めたラーフェン王国ではなく領主様からの冒険者へのご依頼と理解すれば良いでしょうか。この者たちは騎士団や領兵ではありませんので。さらに領主様が先ほどおっしゃったように私だけでなくメオン、ジェロマンはギルド職員ですので、その他の冒険者たちが依頼の受託を望めばお受けする、でよろしいでしょうか」

「お前の言いたいことは分かる。またしても依頼報酬を取り上げようとされる可能性がある王太子殿下からの話を受ける者は居ないだろう。その上に、ムスターデ帝国の追手の危険を踏まえると、依頼を引き受ける冒険者が居るとは、と」

「はい、騎士団や領軍の皆様にお願いすべきことかと。前回でも帝国兵が数十人という追手に冒険者が少人数で対応するのは現実的でありません。しかもラーフェン王国の騎士の方々すらもいないまま王族の方々と平民である彼らのみで長期行動となると、王女殿下たちへの風評への影響の責を負えません」

「その帝国兵への対応のためにも、大人数で護衛することにより国内で小規模戦争となることを回避せねばならない。それにその帝国兵の数十人を殲滅したり、ダンジョンを利用してまいたりしたのはその者であろう?さらに、その前にもそのダンジョン最奥で活躍したのも。ギルド職員としてだけでなく冒険者でもあり銀級なのであろう?」

「それはその通りですが」

「ただ、最後の懸念は理解する。腕もありながら王族へ粗相の無いであろう女性騎士を2名同行させることにする。それで良いな」

「は……」


アンブリスが粘ってくれるやりとりを横で聞いていたジェロは

「ジェロさん、今度もどうぞよろしくお願いします」

とモーネ王女から声をかけられると

「かしこまりました……」

と答えるしか無かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る