第129話 ニースコン防衛3

「この魔法の使い手が味方で良かったよ」

「助かった。ありがとう」

ガニーからの応援冒険者以外はジェロの魔法を見るのが初めてであり、守備隊やニースコンの元からの冒険者達に声をかけられるが、ジェロはうつむいたままである。

『魂は貰っておくわね』

『あぁ……それだけ殺したということだよな。俺がこの手で。魔物ではなく魔人でもなく、人を』

『そうね。護衛することになったラーフェン王国の王族達のためには、帝国兵を逃がすわけに行かないから仕方ないわよ。先に攻撃して来た上に、引き下がらなかったのも彼らだし』

『あぁ』


「ジェロ、良くやった!今夜の撃退も含めて、この街での数々の貢献の報酬だ。これでこれから行くモージャンの街で魔法カードを買い漁れ!」

ジェロの性格を分かっているメオンは、自身の行為に金で折り合いをつけろ、好きな魔法カードに気持ちを切り替えろ、と励ますためアンセルムと交渉して報酬の即金化を調整したのであった。

「ジェロさん、夜が明けたら護衛で大変ですよ!今夜はもう寝ましょう!」

それとなく察した“ジェロ班”のメンバも声をかけてくれて、宿屋に向けて手を引いていく。

「ジェロさん、寝られないなら添い寝してあげますよ」

リスチーヌに言われ、真っ赤になりながら自室に逃げ込む。

『あら、お誘いに乗れば良かったのに』

『からかわれただけだよ……』

『そうとも限らないと思うけれどね』

皆のありがたい心づかいに感謝し、翌日からのことを考えて無理にベッドに潜り込む。


「話には聞いていたが、これを彼がほぼ1人でやったというのだな」

「はい」

「護衛依頼を任せるのに相応しいのだろうが、この街から手放すのが惜しくなるな」

城門の外の惨劇を見ながら、アンセルムがセドリユスと話している。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る