第108話 道中のモージャン2

「こちらは何とかなっているが、ガニーはどうだ?」

前のギルドマスターであるアンブリスに問われ、顔をしかめるメオンとジェロ。事情を聞いたアンブリスからは

「そうか、冒険者ギルドの職員側にも色々いるからな。どうしても合わないならば、モージャンに移籍してきたら良いぞ。歓迎するぞ。魔法カードも豊富だぞ」

と笑いながら言われたことで思い出す。

「実は……」

せっかくガニーの街より大きなモージャンに来たのだが、図書館や魔道具店に行く時間が無い。夕方に少し時間が取れると期待していたのに、盗賊達の処理のこともあったからと。

「せめて冒険者ギルドの魔法カードの在庫を拝見したいのです」

「そうか、購入希望の冒険者、お客様として許可しよう」

日頃はあまりわがままも言わずに淡々と事務業務を実施するか、冒険者の強い発言に怯えるか受付嬢へ構えているジェロのたまに見せる欲の素顔であり、アンブリスとメオンはニヤニヤしてしまう。


「え!?」

と驚くほど雑な管理のされ方の魔法カードの束を渡された。カードより少し大きめの箱に何の区別の並び替えもされないまま入れられていたのである。確かにガニーの冒険者ギルドではジェロが工夫した木枠を使用しているのは置いておいても、魔道具店でもそこそこは整理されていたのに、驚きである。

仕方ないので何十枚かある魔法カードを属性別に区分して、等級別に並べ直すジェロ。

『あら、それ良いじゃない』

『この≪氷結≫?』

『盗賊も売却できるように殺さないためには、火魔法は難しいでしょ。氷は殺さないで捕縛するのに便利よ。まぁ殺して魂をくれるのもありがたいけれどね。それに魔物の毛皮も火で燃やすと勿体無いからね』

『そうか、ありがとう。ま、確かに上級魔法で他にめぼしいのも無いし、前のお金もあるから買えるね』

これも現代魔術ではあったが詠唱文の魔術語と魔法陣がきちんと記載されており簡易魔導書になりえたので、すぐに宿の自室で練習を開始するのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る