第101話 石球魔法

風魔法の初級の習得の後は、少し地味に思える土魔法に挑戦する。


しかしジェロはここでふと考え込んでしまう。土、砂、石などと呼ばれるものは、いろいろな素材の集まったものであった。空気も色々と混ざっているが、ほとんどは窒素と酸素である。石は、金属と硫黄などが混ざった鉱物や宝石などの総称であり、例えば炭素だけを高温高圧で圧縮してできるダイヤモンド、酸化アルミニウムのルビーやサファイアも宝石で、石の一種である。


成分をイメージして生成する方法では、あまりに多くの元素を複合することになり、≪砂生成≫≪石球≫のようにとても初級魔法で行うものではない。

かといって、例えばシンプルな鉄だけ、炭素のみのダイヤモンドだけなどを“砂”や“石”という単語で表すのはイメージと合わないので無理だろうと諦める。


結果、砂だけであれば海岸の砂浜や、公園などの砂場をイメージし、石球は野球のボールほどの大きさを高速に投げるイメージで≪砂生成≫と≪石球≫を習得する。

そして、何度か試してみたものの、やはり鉄やダイヤモンドの生成はできなかった。


『ジェロでも、全部の魔法を威力向上できるわけではないのね』

『まぁ前世知識も万能ではないし、あちらの知識を全て知っているわけでもないから』

『それでもこれだけの種類の魔法を覚えて、ほとんどが他人より威力があるのは特殊よ』


魔法カードのコレクションで所有している魔法はすべて習得できたので、余計に追加のカード収集欲が出てくる。先日のモージャン出張の際の臨時収入もあるので、購入資金も少しはある。

買いに行くにも、冒険者ギルドの在庫はおそらく見覚えがあるものばかりであろうというのと、休日とはいえギルドマスターに出くわすのは避けたい。そこで以前から気になっていた魔道具店に行ってみたが、いざ買いたいと思えるほどの魔法カードも魔導書も無かった。可能であれば古代魔術の物を、と期待していたがそれ以前の品揃えであった。

大きな街や王都に行く機会があるまで資金は貯めておくしかないか、とため息をつく。

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