第99話 そよ風魔法

ジェロは先輩方やヤンクイユ商会3人娘のお陰で少し気が紛れたので、そのまま日々を過ごしつつ、気分転換に好きな魔法カードのコレクション側に気持ちを向ける。


魔法カードは入手済みなのに、ジェロとして未習得であるのは風魔法≪そよ風≫、≪風刃≫、土魔法≪砂生成≫、≪石球≫である。本当は図書室などでちゃんとした魔導書を読みながら習得したいところだが、例え正規に料金を払っての入室であっても、あのマスターに出くわす可能性もあるので、休日に冒険者ギルドに行くのは腰が引ける。

簡易魔導書になる程度には、現代魔術語の詠唱文と魔法陣が書かれたカードも所有しているので、それを使って練習をする。

『ジェロが各属性の魔法を使えるようになると、私が使っても目立たないよね』

『そうか。もっと上位の魔法を覚えたいのもあるが、属性も広げておいた方が良いか』

『そうね。上級までの火魔法があれば、その辺の敵ぐらいなら倒せるわよ。その上の王級だと範囲攻撃が多くなるから、多数相手ならば便利だけどね』

『範囲攻撃で多くの敵を一気に倒すのも厨二病的には憧れるが、まずは属性を広げるか』

『魔物だと効きにくい属性もあったりするから、それぞれの弱点にあった攻撃魔法が良いわね』

『まぁ冒険者で活躍するのを目指すのは怖いから。でも全属性を使えるとカッコいいかな』

『その厨二病ってヤツ?そうかもね』


ジェロのイメージでは、土魔法の≪石球≫より風魔法の≪風刃≫の方がカッコいいということから、まずは風魔法から習得を目指す。


風は気圧の高い所から低い所へ吹くという理屈を考えて、風を出すところには空気を濃く、風を受けたいところには空気を薄くする。空気はだいたい窒素が8割、酸素が2割ということも前世知識があったため、空気を濃くもしくは薄くというのはこれらの分子量を増やしたり減らしたりと考え、風を受けたいところの分子を出したいところに移動するイメージを持つ。

まずは≪そよ風≫であるので、気圧差も少なく動かす分子量が少なくて良い。ヴァルが先に見本を発動したのもあり、これは直ぐに発動、習得できた。

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