第97話 移籍検討

ある時、上司のメオンから声をかけられる。

「ジェロ、大丈夫か?もうドナシアンさんの下ではしんどいだろう。モージャンにでも移籍しないか?」

メオン自身も、肉体派で事務処理を苦手とするドナシアンに丸投げされる業務がいっぱいでうんざりしており、アンブリスがマスターだったときのことを思い出している。

「え?できるんですか?いや、でも……」

住み慣れた街を離れる決断もできずに悩むジェロ。


「ジェロ、今日行くぞ!」

ヴィクシムに飲みに連れて来られているジェロ。いつものようにバスチャンも居るし、ヤンクイユ商会の女性3人も居る。

「ジェロが最近凹んでいるみたいで、コレットたち受付嬢だけでなくいろんな職員たちも心配していた。どうも新しいマスターと合わないみたいだから」

「えー、そうなんですか?」

「大丈夫ですか?事務能力も戦闘力もあって重宝されるんじゃないんですか?」

「ありがとうございます……」

「それに比べてバスチャンは、肉体派だからあのマスターの方が良いのか?」

「いや、俺もしごかれて大変なんだよ。もっと若手冒険者を鍛えろ、やり方がなっていないとか。それを新人たちの前でやられるから俺の立場も……」

「えー、バスチャンさんもですか?じゃあ、ヴィクシムさんは大丈夫なんですか?」

「まぁ適当に立ち回っているよ」

「さすがヴィクシムさん!」

「バスチャンさん、ジェロさんもうまく立ち回れたら良いのに」

「俺はまぁこれでも何とかするけれど、ジェロはかなりキツそうだな……」

「商会に転職されます?ジェロさんなら、逃した魚の大きさを後悔しているようなので、多分いけますよ?」

「いえ、もう少し頑張ってみます……」


『良い人たちに恵まれたわね』

『うん』

周りの暖かさに感謝し、その人たちが居るガニーの街を出るのはやはり難しいかと考えるジェロであった。

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