第50話 オーク被害処理

先程、一度だけの≪回復≫魔法だけで放置した商人の所に戻ったところで、娘が駆け出す。

「お父さん!お父さん!」

「先程とりあえず傷は塞ぎましたが、揺らさないでください」

「はい、すみません」

娘に少しずれて貰い背中に手を当てながら≪回復≫魔法をもう2回発動する。

「あぁ、リリー、無事だったか。良かった。良かった……」

「お父さん……」


ほっとしたところで疲労が襲ってきて、2人を前に座り込むジェロ。

「おーい、ジェロ、大丈夫か?おい、どうした?」

「バスチャンさん、ちょっと休憩させてください……」

「なんだ?こちらの2人はオークの被害者か?」

「はい、私アナトマと申します。こちらは娘のリリアーヌです。馬車の方、護衛の皆さんは大丈夫でしょうか?」

「あぁ、何人かは助かったみたいだ。で、ジェロ、こちらで何があったか分からないが、あちらの回復を手伝って貰えないか?」

「あ、はい。わかりました」


回復魔法のためも含めて派遣されたことを思い出し、気合を入れて立ち上がり街道に戻る。冒険者の中でも回復魔法が使える者も居て少しは治療を始めていたようである。ポーションは今後のことを踏まえて温存して、寝たら大幅に回復する魔力消費だけの魔法のみにするようメオンが指示をしていたらしい。ジェロもできる限りの≪治癒≫や≪回復≫魔法をかけてまわり、治療相手が居なくなったところで一息をついた途端に、先程のオーク4匹のことが思い出されて震えがやってくる。

『ジェロ、大丈夫?』

『あぁ、死ぬかと思った。もっと慎重に行かないとな。ヴァル、助かったよ。ありがとう』

『あら、細かいことを話そうと思ったら、可愛い子が来たわよ』

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