第49話 契約魔法
女性の悲鳴のした方向へ、木々の中を急いで走って行ったジェロ。
慎重に進めば良かったと思ったのは後の祭りで、3匹のオークに若い女性が担いで運ばれているところに飛び出してしまった。
娘もオークたちも気づいたようで、娘から
「助けてー!」
と言われるものの、ジェロは魔鼠よりはるかに大きく、さらに人型である魔物とまともに対峙するのも初めてであり、腰がひけて固まってしまう。
『ジェロ、早く魔法を!』
ヴァルの声かけで我に返り、目の前のオーク3匹に向かって≪火球≫を連続で発動する。
流石にEランクの下位の中でもさらに下位の魔鼠のように一発で燃え尽くすことにはならず、それなりのダメージは与えているようではあるが1匹も倒れることが無い。
慌てて追加発動しようとしたところで、頭へかなりの衝撃が来る。
うずくまりながら振り返ると、棍棒を振りかぶるオークが立っている。
『ジェロ、危ない!』
不格好ながらに何とか転がって2撃目は回避できたが、目眩の残る状態でこの後は最悪の結論しか想像できない。
『ジェロ、契約して!』
『分かった。でも俺の魂まではやらないよ』
『それで十分よ』
ヴァルはジェロから契約の意思を確認すると、すぐさまに≪火球≫を多発して、ジェロを襲っていたオークを倒しきる。続いて、娘を降ろしてジェロに向かってきた3匹のオークに対しても同様に≪火球≫の多発で始末する。
「冒険者さん!冒険者さん!」
という声で目が覚める。一瞬でも意識を失っていたようである。周りにはオークの死体が4つ転がったままであり、先ほど見かけた娘が自分を揺らしている。
「あ、起きました。大丈夫です。あなたは大丈夫ですか?」
「良かったー。はい、私に怪我はありません。あ、でも向こうに父が!」
「そうでしたね。向かいましょう」
自分に≪回復≫魔法を発動してから、先程の商人のところに向かう。
『ヴァル、とりあえずありがとう。詳細はまた後でね』
『そうね』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます