第44話 魔石奉納

倒した魔鼠8匹の魂をヴァルに奉納したところで、

『次は魔石を回収して』

との要求がある。


黒焦げになった魔鼠をダガーで解体、と言うほどのこともなく切り裂くと焦げることなく小さな魔石が心臓付近と思われるところに存在していた。

魔石は赤紫色の宝石のようと言われるが、ほぼ最低ランクの魔物であるからか、色も薄くサイズも小さい。

これを8個回収した後、右手に転がしながらヴァルに声をかける。

『回収できたよ』

『今度はその魔石8個を奉納すると意識して』

ジェロが奉納を意識したら、元々薄かった色ではあるが完全に消えてしまい、無色透明になった。

『ジェロ本人の魔力奉納以外に、魔石による奉納もあるのよ』


『次は、その空になった魔石を摘んで魔力を注入するように意識して』

言われるまま魔力操作で魔石に注入すると元々の薄い色が戻った。

『空になった魔石にはこうやって魔力を注入できるの。魔力操作のいい練習になるはずよ。でも、元の魔石の品質以上の魔力は込められないから注意してね』


魔鼠からは冒険者ギルドが買取するほどの素材も取れないので、燃やしても惜しくない。そのため、その日は少しずつ移動しながら魔鼠をひたすら狩り続けることになった。

魔石もほとんど価値が無い程度であるのでヴァルに中身は奉納し、もちろん魔鼠の魂も奉納する。

最近はヴァルに余り魔力もあげられていないので、今日は自分の魔物への恐怖心の払拭とヴァルへの奉納のために頑張ろう、と思うジェロであった。


かなりな数の、小さな空の魔石が集まったので、帰りに孤児院によって子供たちにあげることにした。無色透明な宝石のようであり、特に女の子たちに喜ばれた。

シスター・フロラリーも空の魔石への魔力注入は知らなかったようであり、孤児たちへの魔法指導にも使ってみるとお礼を言って貰えた。

『良かったわね』

『あぁ、ヴァル、今日もありがとうな』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る