第43話 魔鼠討伐2

魔鼠に当たった≪火球≫の威力に自分でも驚くジェロ。

『だから、他人より高温になっていると言ったでしょ』

『いや、そうだけど』

『それよりも逃げていくわよ。次も狙って』


確かに1匹がやられたから仕返しに他が襲ってくる、ではなく逃げようとしている。続けて≪火球≫を発動するも、当たらなかった。

『相手も動くから、投げつけるのも速くなるよう意識してみて』

『分かった』


前世知識のイメージでは手元に浮かんだ球を投げつける感じであったので、銃のような速さはイメージできないので、野球のピッチャーが時速150kmなどでボールを投げるようなことをイメージして再度発動すると、今度は逃げられることなく魔鼠を炎で包む。

『良い感じね。ぐっと速くなったわ』


見える範囲に居た8匹全てを焼き尽くしたところで座り込む。

『どう、問題なくできたでしょ』

『あぁ、何とかなった。ありがとう』

『じゃあ、この8匹の魂を私にくれる、と意識して』

どうやら人だけでなく魔物の魂でもヴァルにとって少しはありがたい物らしい。

『魂を頂戴と言うのは、輪廻転生を無くす、存在を無にするのでは無いのよ。それは世界の摂理に反するから。私たちが魂をと言うのは、その生(せい)にて得られた経験を貰うことなのよ。吸収・変換効率は悪いのだけどね。もちろんせっかく輪廻転生してそれぞれの生(せい)で経験を積んで存在を上位のものに変えていく中で1回分の生(せい)の経験を無くすから簡単に決められないことだと思うけれど』

自分の意思で捧げるのでなければ、殺した相手がしばらくの間は選択権を持っているとのことであり、今回は魔鼠の魂、魔鼠がこの一生で得た経験をジェロがヴァルに捧げる判断ができるとのこと。

『やっぱりこの程度のランクだと、と言う感じね。これからの人生でジェロが倒す魔物の魂をくれると言って欲しいな』

『うーん、まぁ困ることは無いかな。分かった。特に否定しない限りはヴァルが貰って』

前世記憶のゲーム等で倒した敵から何かを吸収して強くなる、レベルアップする世界の仕組みはそうなのかもしれない。自分で吸収できない世界なのであげても良いだろう。



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