第42話 魔鼠討伐

攻撃魔法である≪火球≫魔法の練習も兼ねて、ヴァルが魔物の狩りを提案して来たが、ジェロは昔の記憶もあり簡単には踏ん切りがつかない。


今、ジェロは事務職員として働いているのもあり、防具は所有していない。武器も短剣、ダガー1本を腰に装備しているだけである。この世界の成人男性はだいたいナイフかダガーのどちらかは常備しているものだからである。


『昔のホーンラビットが怖いなら、魔鼠はどう?』

『あのドブに居る奴?』

『そう。あれならうさぎよりも小さいし』

『うーん』

『あれくらいなら冒険者でなくても一般人でも退治するでしょ。それにジェロは結婚したいなら、子供ができたときお父さんがある程度は頼もしくないと、と女性は考えると思うわよ』

『……分かったよ』


結婚の単語を使いヴァルに焚き付けられたジェロは、孤児院の近くでも見かけたドブ川の魔鼠、通常のネズミより少し大きいぐらいのものを探しに行く。この魔物はヴァルが言うように単独では討伐依頼も無い。あまりに繁殖した際にその一帯全体を駆除する依頼になる程度である。しかし、一応小さな魔石がとれるので魔物であることは確かめられている。


『ほら居たわよ』

『分かったよ』

確かにドブ川には何匹かの魔鼠がちょろちょろしているのが見える。また、火を使用しても周りに類焼するようなものが無いことも確認できる。


岩場での練習で、ある程度は無詠唱でも発動できるようになっていたので、深呼吸をして気持ちを落ち着かせた後は、右手を差し出し魔鼠を狙って≪火球≫を発動する。黄色と白色の中間ぐらいの火の球が飛び出し魔鼠を焼き尽くす。

『え!?』

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