第33話 モージャン冒険者ギルド

エムに色々と気付かれていたことをヴァルにからかわれながらギルドに戻り、台車を片付けるとすぐに上司メオンに報告する。

「そうか、モージャンの街か。確かにダンジョンに隣接しているからあり得るな。あちらのギルドマスター、ザールさんはうちのマスターが嫌いだから情報をまわしていないのかな。頼ろうとしていると思われたく無いのかもな。マスターには報告しておく」


ジェロは前世の異世界物語の定番のダンジョンを思い出す。迷宮、魔窟とも呼ばれるダンジョン、この世界でも御多分に洩れず魔物が棲息し宝物も発見される場所である。

単に魔物が巣食うだけの洞窟なども広義ではダンジョンと呼ばれることもあるが、一般的には魔素が集まりやすいところに魔物が自動発生することで出来ると言われる狭義のダンジョンのことをさす。

魔素が集まり濃くなると巨大な魔石ができて、洞窟などその構造物自体が大きな魔物であるかのように成長し、人を呼び寄せるためのエサである宝物を用意しておきながら、魔物や罠を設置したり成長することで階層を増やしたり奥行きを広げたりするようになる。通常の魔物が人を襲うのと同様に、ダンジョン内で死亡した人から魔力を吸収して成長すると推定される。その根拠として、死体や装備はダンジョンに吸収されていくことが確認されている。

通常の魔物と同様に、その巨大な魔石を壊されたり奪われたりするとダンジョンは死亡し成長しなくなる。その巨大な魔石はダンジョンコアと呼ばれることもあり、このダンジョンコアを壊すか持ち帰るかするとダンジョンを制覇したと言われる。

一度制覇されたダンジョンもしばらくするとまた魔素が集まってきてか、再度ダンジョンコアが復活することが多い。この性質を活かして魔物の素材や挑戦しに来る冒険者をあてにしてダンジョンを中心とした街ができているところもある。


モージャンの街はまさにそのダンジョンのために冒険者が集まりそれなりに発展している街である。


『ジェロはダンジョンには行かないの?』

『お願いだ、そういうことを言わないでくれ。フラグというんだよ。俺は目立たずに生きたいんだ』

『つまり、ジェロがダンジョンで活躍して楽しませてくれることになると言うのね』

『……』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る