第32話 ヤンクイユ商会3
パスカエルと名乗った商会の人に、この大量の素材等が別の街から持ち込まれたらしいことを伝える。
「そうですか。これだけの量が納品されると明日の買取単価は下がることをお伝え頂けますか」
「商会規模でもそうですか。かしこまりました」
「ジェロ兄、それって」
「はい、エマニックさん、想像の通りだと思います。どこかの街で買取価格が下がったので、ガニーの街に持ち込んだのかと。逆にヤンクイユ商会様の方でどの街か情報は無いでしょうか。魔物氾濫が気になります」
「さすがですね。はい、モージャンの街で納品が増えているので、近隣の街に融通の話が来ておりました。そうです、モージャンですので悪意を持って市場混乱を、というよりダンジョンで何かあったのかと懸念されますね」
つい言葉が甘くなったエマニックに注意の視線をしながら、上役のパスカエルが答える。
「既にお気づきでしょうが、痛んだ武具はゴブリンやオーク等の人型魔物がよく使う物でしたし、オークの魔石があっても一番人気のある肉が無かったのは、外部からの持ち込みの証跡だと思われます」
「やはりそうですよね」
「冒険者でも、需要と供給で価格変動するのを踏まえた売り方をするのですね」
「まぁ一部には賢い方もいらっしゃいますから」
それでは、とジェロが退出しようとしたところでパスカエルから声をかけられる。
「やはり逃した魚は大きかったですね。何年か前に見習いに来られていた方ですよね」
「はい、昔にこちらでお世話になったことがあります」
「我々も適材適所を考えるように意識改革を行っております。どうかこの商会のこと、悪く思わず引き続きよろしくお願いします」
「こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」
帰りも敷地の端までエムが見送ってくれる。
「ジェロ兄みたいに最後まではカッコ良くし続けられなかったね。恥ずかしい」
「いや、俺こそ知り合いが居て助かった。エムを呼んでくれたジェリーヌさんのお陰かな」
「ジェロ兄はジェリーヌさんみたいな人が良いの?」
「いや、そういうわけでは!」
「知っているよ、ジェロ兄はフロ姉だよね。フロ姉は気づいてないと思うけど」
「え!……」
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