第31話 ヤンクイユ商会2

鑑定が終わった素材等を台車に乗せてヤンクイユ商会に向かうジェロ。

『あの子達に会えるのが楽しみね』

『分かっていて言っているだろう……』

ジェロにしてみたら、先日に会った女性3人の顔を見ること以上に、接客が苦手で見習いを辞めてしまった商会に何年も経って取引相手として顔を出すことの方が憂鬱である。

人付き合いを苦手にしていることを知っている上司メオンが、まだ若いジェロの苦手克服の機会のつもりで任せたであろうことも、前世の分も足すとかなり大人なジェロは分かってしまっているので、素直に商会に向かっている。


商会の裏口に到着すると、冒険者ギルドの納品である旨を伝えて敷地内に入れて貰う。

「あらジェロさん、こんにちは。納品ですか?やっぱりヴィクシムさんはクビに?」

「いえ、今日は代理です……」

「もちろん分かっていますよ。少々お待ちくださいね」

先日の女性3人のうち一番派手で妖艶だったジェリーヌが、職場では少し落ち着いた服装ではあるものの明るさは変わらず話しかけてきた。休憩時間で裏側に来ていたのであろうか。


「ジェロマンさん、こんにちは。こちらへどうぞ」

やって来たのは孤児院の後輩であったエム、エマニックである。

「接客はしないけど、裏方はある程度やっているのよ」

2人で移動しながら、他の人が見えなくなったところで砕けた話し方に変わった。

「今日は多いようなのでこちらでお願いしますね」

どうもエムの上役らしい人も居る部屋で、テーブルの上に納品物を順番に並べていく。


「量は多いですが、いつものように種類や品質ごとに仕分けされているので助かります。本日の買取単価はこちらになりますので、合計でこちらになります」

「はい、確認しました」

「さすがジェロマンさん、計算が早いですね」

「それは置いておいて、冒険者ギルドから商会の方への伝言があるのですが、エマニックさんにお伝えすれば良いですか?」

「いえ、私が承ります」

今まで発言せずに奥の机で作業していた上役らしい人が近寄ってくる。

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