第29話 古代魔術と現代魔術2

『ねぇ、ヴァルはさっき現代魔術を簡易魔術って呼んだよね?どういうこと?』

『うーん、そうだねぇ。この魔導書、≪治癒≫の効果を得られる魔法について現代魔術と古代魔術の両方の詠唱文と魔法陣が書かれているけどどう思う?』

『古代魔術は文字が複雑で短いね』

『そう、特徴の一つはそこにあるの。短いということはそれだけ発動が早められるなどの利点があるでしょ。さらに文字に情報が多いので正しく伝えやすいの』


確かに漢字ならば「治療」「地料」の違いも文字だけでわかるが、ひらがなであれば「きずをなおす」「とちだい」のどちらの「ちりょう」かが確実には伝わらない。

それに「からだからまりょくをあつめてちりょうする」と「体から魔力を集めて治療する」では認識の速さも違う。


『もう一つの特徴は、単純化でね。先の一つにも繋がるのだけど、自由度が少なくなってシンプルにしただけ覚えやすく普及しやすくしたのだと思うわ。実際に現代魔術だけの魔法を使える人が増えたけど、逆に古代魔術を理解できる人は減ったと思うわよ』

ジェロは、この≪治癒≫魔法の魔導書の古代魔術のところを見て、ヴァルを召喚した魔法カードの魔法陣はきっと古代魔術であったと認識した。


魔法の発動が自分への命令なのか世界への命令なのか、物によっても違うのかもしれないが、詠唱文がプログラム言語と考えた場合には、BASIC言語のような現代魔術語では処理速度などにおいてマシン語・機械語のような古代魔術語に及ばないはずである。

パソコンのように様々なことができる汎用品へ向けた回路やプログラムではなく、自動車や炊飯器の専用回路やプログラムのように、何かの魔法専用の言語、回路、プログラムの方がさらに高速になると考えて、古代魔術の魔法陣を見るとそのように作られた回路であるように見えてくる。



ジェロは孤児院にいるときに、回復魔法でも初級の≪治癒≫、中級の≪回復≫まで習得して、それぞれの魔導書を見せて貰うことができた。この≪回復≫の魔導書にも現代魔術だけでなく古代魔術も書かれており、重要ポイントは自身で作り始めた研究ノートに記録し始めることにした。その上で古代魔術での≪治癒≫≪回復≫も習得し自由度や効果を高める術も学んである。

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