第27話 治癒魔法2

ジェロは前世の赤血球や血小板という知識があったのと、シスター達による回復魔法の発動効果を直に何度も見ていたのと両方で、魔法発動イメージがしっかりあったので習得は早かった。


初級の≪治癒≫を習ったのであるが、まずは自身に小さな傷をつけて、それを治す練習から始めた。詠唱文はシスター達の声を耳で覚えていたのでそれほど苦労なく音は覚えたのであるが、この世界の現代語ではないアルファベットやひらがなのような(現代)魔術語による単語の習得には少し苦労した。しかし好きなこと、興味のあることはすぐに身に付くものである。嫌々であった授業の歴史の人物名、英語の単語は覚えられなくてもゲームや物語の人物や呪文は覚えられるのと同じである、とジェロは考えるのであった。


次に他人の魔力の波長把握はさらに苦労した。一人一人の波長が違うため、特定の一人、例えばフロラリー相手にだけ練習していると、波長を合わせる訓練にならないからである。

子供同士で、小さいとはいえ傷をつけて練習することはシスター達が許さなかったので、シスター達に時間ができた時にのみ練習するので訓練量が不足しがちであった。途中から怪我をしていなくても≪治癒≫魔法を発動、波長合わせをできることを知ってからは多くの子供の協力を貰い習熟するのであった。


魔術語も教わったので、今までプログラム言語のようであると漠然と思っていたことも理由がわかった。

体内で魔力を集める。治癒対象は自分か他人か。他人なら他人の魔力の波長を把握。他人の波長に魔力を合わせる。治癒する部位に魔力を集める。本人のその部位の治癒能力を高めて治させる。という魔法発動までの工程を言語化してあり、時には条件式があり、集める魔力量などはその数値を変数で定義しているようなものである。まさにプログラムである。


さらに追加で教わった(現代)魔術の魔法陣は、その目線で見ると魔法発動までの工程をフローチャートにして詠唱文である現代魔術語が一緒に埋め込まれている感じであると気づいた。

魔法陣はジェロには初級魔法では特に必須ではないが、不慣れな魔法の発動を確実化させる時や消費魔力を下げる効果を狙って、地面や羊皮紙などに描いてから魔法発動することがあるらしい。確かに工程をしっかり見ながらなので、まるでカンニングしながら発動させるようなものである。だから、色々な魔法陣が書き込まれた魔導書を持ち歩いて発動時にそのページを開く魔法使いがいるのかもしれない。

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