第26話 治癒魔法
神殿で新しい魔導書を見せて貰えるというので、初めて魔法を習得したときのことを思い出す。
記憶が蘇った後のジェロは、せっかくこの世界に来たのであるから魔法を習得したいという気持ちであった。
記憶が蘇る前から、孤児院の子供が怪我した際に神官が回復魔法を使用するのも見ていたが、前世を知った後は機会がある度にしっかりと見させて貰うようになり、さらには習得の指導をお願いしたのである。記憶が蘇った後のジェロは、今まで以上に年下への面倒を見るなど、シスター達からの評価が良かったのですんなり受け入れられた。
魔法習得に必要なこととして言われたのは、まずは魔力の流れを認識、そしてその操作の習得である。前世の異世界物語によっては、呪文を詠唱するだけ、魔導書かスクロールを消費するだけ、もしくはレベルかスキルが上がると自動で新しい魔法を習得する等のパターンもあったが、この世界ではそうでなかった。しかし、この魔力操作はヴァルが自分への魔力供出にも繋がるため早々に指導してくれていたおかげで何とかなった。
前世知識で言うと、体の中の血液の流れというより呼吸で血液に取り込んだ酸素の流れを認識する、それを動かすという無茶みたいなことにも思えた。しかし、ヴァルがジェロの体内の魔力を操作することで、違和感を認識でき次の段階に進めていくことができた。
その後は回復魔法自体の指導であったが、ジェロにすると意外であったのは、前世の異世界物語でよくあった神様からの恩恵の一種では無いとのことであった。もちろん神の力による奇跡などもあるが、今の神職が普段に発動している回復魔法は、神の力に関係なく自身の魔力のみに依存する魔法とのことである。シスター・フロラリーが教えてくれた回復魔法もそうであった。
回復魔法は自身の治療と他人の治療では難易度が異なるのでまずは自身の治療からである。最初に魔力操作で消費するつもりの量の魔力を治療したい部位に集め、傷が治っていくことをイメージして念じる、というものであった。
他人の治療では、さらに工程が増える。魔力の波長は人ごとに異なるので、治療対象者の波長に合わせた魔力を送り込む必要がある。この際に、手のひらなどから体外に魔力を出すことにも慣れが必要であったが、これもヴァルのおかげでなんとかなった。
また、それに相当する(現代)魔術語の文字、その読み方を教えて貰って詠唱文として唱える。以前からシスターたちが魔法発動時に詠唱していた音も耳に残っていたので、その音がこの文字や単語であるのかと理解する。
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