第25話 コレクター思考

ジェロはヴァルと出会ったときのことを改めて思い出すと違和感があった。

『なぁ、ヴァルを召喚したらしいとき、魔法カードであったと思うのに魔力を込めた記憶が無いんだ。なんで発動したのだろうか』


カードフォルダから両面無地になったカードを取り出し眺めながらヴァルに聞いてみる。

『さぁね。魔力は誰かが込めてありながら、召喚の最後のきっかけ、人の血を与えるということをするまでは発動しないようにしていたのかもね』

『うーん、確かに表面の記載もないし、記憶の限り複雑さが現代魔術のカードとは全く違ったし。全然違う作り方をしたのかな。今の魔法カードの系統というよりカード形状の魔道具だったのかな。魔法カードの黎明期の試行錯誤の1つだったのかな……』

『今さら無地になったカードを見ても分からないんじゃないの?』

『そうだけど。今どきの魔法カードは、昔からのスクロールと同じように魔力を込めて発動するとその力を使ってしまって消えるんだよな。魔石を砕いて混ぜられたインクで記述された魔法陣は』

『他のカードともカード自体の素材が違うみたいだし、色々が違うんじゃない?』

『確かに、表面に魔法の名前や解説も無かったんだよな。今どきのは、使用後で裏面が消えても表面は残るから、魔法カードのコレクションの入門として集めたりするのだけど』

『ジェロも何枚も持っているわよね』

『そう、詠唱文や説明文で勉強になるだけでなく、カリグラフィーなど見ていても飽きないから、露天商などで安く売られているのを見かけるとつい買ってしまう……』

『ふーん』

前世でもコレクションは無理解の相手には冷めて見られるものであった。


『ヴァルは自分が召喚された魔法陣などに興味は無いの?』

『うーん、無いわけでは。でも見ていても仕方ないしね』

ジェロとしてはあの美しかったカードをぜひコレクションしたいのであるが、温度差があるようである。

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