第21話 魔物2
噂をすれば影、では無いであろうが、ジェロのこの日の仕事は魔物の情報整理であった。
冒険者ギルドの受付業務の華やかさの裏、裏方業務は多岐にわたる。
依頼の受付・割り振り等の管理業務、依頼者から報酬の預かり、冒険者へ支払いをする会計業務、納品された魔物の解体作業、素材の鑑定、それらの商会への販売、逆にギルドで販売する消耗品の仕入れ、等の言うなれば人材斡旋業、魔物素材関係の商会業のような業務の裏方。
冒険者たちがどのような依頼をどうこなしたかの実績・評価管理、ギルド職員自体への評価・給与支給のような人事業務。ギルドの建物、備品等の管理の総務庶務業務。
そして、魔物の発見や討伐情報を整理して魔物の氾濫(スタンピード)の把握を予測する役所のような業務もある。
その魔物の情報整理である。
基本的に魔物の棲家はだいたい決まっており、いつもと違う場所で発見された時、いつもより多くの数が発見された時には、何らかの異常の前触れである可能性がある。
それを統計的に確認するのも冒険者ギルドの裏方業務である。通常からかなり乖離した高ランクの魔物が発見されたのでない限りは話題にもならないため、統計的に把握するのである。単なる魔物の名前、発見日時のメモから、集計表を作成し、グラフなどで可視化することで違いに気づきやすくするのである。
前世では表計算ソフトで簡易にできていたことが手作業になるので苦労するが、ジェロにして見るとアウトプットのイメージがあるのと計算が得意であるため、他者より効率的に、かつ効果的なまとめ資料を制作できている。
『つまらない作業をやっているようにしか見えないのだけど』
『いや、前世の物語でも見たようなスタンピードが発生して、知り合いを含めた皆が危険にさらされるのを避けられるならこれくらいはね。それに俺がやると褒めてもらえる作業だから』
『まぁこんな作業、好んでやる人はそうそう居ないわよね……』
「よし、特に問題は無さそうだ。良かった」
きちんと仕事を終わらせ、今日こそは、と先日覚えた≪簡易鑑定≫をさらに習熟するよう魔法訓練に励むジェロであった。
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