第13話 魔術語

ジェロが作業をしている保管庫に人が入ってくる。

「お、ジェロか」

「ヴィクシムさん。鑑定業務ですか?」

「そうなんだ。あ、魔法カードの整理をしてくれているのか、助かるよ」

「いえ、好きなものを触らせて貰っているだけですから」

「いや、俺は初級≪簡易鑑定≫しかできなくて、低級・中級・高級などのそれぞれ下位・中位・上位と魔法付与などの特殊効果の有無がわかる程度だから。ちゃんとしたラベルに直してくれるのは助かるよ」

「それでも素材やポーション、武具など色々な物を判別できる魔法なので羨ましいです。私は魔法カードだけに、魔法の名前をラベルにしているだけですよ」


ヴィクシムが鑑定魔法を詠唱しながら保管庫の未整理物品に対してラベルをつけていく。ヴィクシムは魔法の発動において魔導書の魔法陣のページを開いて利用している。神殿の神官達が回復魔法を発動する際には魔法陣なしで詠唱をしていた。ジェロが過去に見た魔法使い達は詠唱の有無も色々であったが、魔法陣の使用もまちまちであった。興味を持たされたのは、前世記憶の一部の物語のように空中に魔法陣を魔力で描く者であり、属性ごとに色が違うようで、火風水土光闇と無属性がそれぞれ赤緑青茶黄黒と白である。ただ、魔法陣を描くのは詠唱しながらでありそれだけ発動までに時間もかかっていた。魔法使いにも色々な流派があるようである。


ヴィクシムの横で、ジェロも魔法カードに魔法の名前のラベルを作っていく。

「なぁジェロ、それどうやっているんだ?」

「え?あぁ、この表面の上部に魔術語で書かれている魔法の名前を現代語にしているだけですよ」

「やっぱり魔術語か。その魔法の名前が現代語で書かれるってほとんど無いよな。俺も覚えられたらもっと仕事ができるかな」

「そうですね、魔法の名前は魔術語が多いですね。古代魔術語の物はまず無いので、現代魔術語なら覚えやすいですし、ギルドで販売されるような魔法は種類が少ないので。ほとんど初級、たまに中級ぐらいですよね」

「なぁジェロ、それを教えて貰えないか?」

「え?私がですか?」

「あぁ、頼む。かわりに≪簡易鑑定≫を教えるから」

「え!そんなのかわりになりませんよ。ちょっと待ってください」

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