第11話 魔法カード

休日であった翌日、ギルドの保管庫で嬉しそうにカードを閲覧するジェロ。

『すっかり元気になったわね』

『まぁな』

ジェロは前世でトレーディングカードをコレクションしていた。保存用、観賞用、布教用の3枚ずつ集めていたほどであった。前世のように高度な印刷技術があるわけでないので、この世界のカードは1枚1枚が手作りであり、同じ魔法であっても全く同一の物は存在しない。

『確かに同じ目的の魔法でも作り手によって書かれる魔法陣も異なるからね』

『そうだろう、だから眺めていても飽きない。さらに、魔法陣の意味も解ればなおさらだ』

魔法をある程度は理解できてきたジェロにとって、魔法陣はまるで電子回路やフローチャートのようで、魔法の詠唱文はプログラム言語のように思えている。同じ結果を発動する魔法でも方言のように異なる表現方法があり効果量が違うこともあり、未知の魔法陣や詠唱文を見ることは暗号解読のようでもあり魔法の理解にも役立つため、その意味でも非常に興味を惹かれるのが、コレクション欲だけでない、ジェロにとってのカード閲覧であった。


数を見るようになってジェロが気づいているのが、魔法陣や詠唱文にも系統があることである。

特に新しい初級の量産されたようなカードと古そうなカードではまったく異なる。量産型はBASIC言語のように分かりやすく、古い物はマシン語、機械語のように複雑である。前者は現代魔術、後者は古代魔術と呼ばれているようである。

過去の転移者か転生者が先にカード文化を導入し、それより後の転生者がBASIC言語のような現代魔術の文化を導入したのでは、と推測している。


魔法カードの表面には≪治癒≫のような魔法の名前、簡易なケガの回復のような解説、そして稀に詠唱文と解説が魔術語や現代語で書かれている。新しい量産品ほど現代語で記載されている。カリグラフィーで文字を美しく見せているものが多く、それもコレクション要素である。

裏面には魔法陣が描かれている。魔法陣とは電子回路やフローチャートのようでもあるが、幾何学模様が主で、魔術語で詠唱文が埋め込まれている物もある。

つまり、物によっては簡易な魔導書のような物である。

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