第6話・順番
●ユーチューバーのエミシ@公式 @emishi55
みんなおはよう!今日も一日元気にがんばりましょー!
午後からところにより雨という天気予報が出てます、関東の人は注意注意!
●ユーチューバーのエミシ@公式 @emishi55
朝起きたらまさかの百万再生突破してる((((;゚Д゚))))
すげえ!今までの最高新記録かも!?みんなありがとう!
↓
●チョーチョ @sfjpHla8ko
返信先: @emishi55
エミシおはよ。
思い切って拡散しまくった甲斐があったってなもんだぜ(。•̀ᴗ-)✧
↓
●ユーチューバーのエミシ @emishi55
返信先: @sfjpHla8ko
おはようございます、チョーチョさん!いつもありがとう!
今夜は快眠でした。うーん、何か夢見るかと思ったんだけど、全然そんな気配なかったね……。
俺みたいなおじさんじゃ、拷問のしがいもないからお呼ばれしないってことなのかな(;´Д`)
↓
●チョーチョ @sfjpHla8ko
返信先: @emishi55
拷問のしがいはあるだろwwww
あんたホラーゲームでめっちゃくちゃ悲鳴上げまくってるやんwwww
↓
●ユーチューバーのエミシ @emishi55
返信先: @sfjpHla8ko
拷問の屋敷の主も、どうせなら可愛い女の子の悲鳴が聞きたい可能性が微レ存。
俺みたいなおじさんの悲鳴は気持ち悪いだけなのかもしれない(´;ω;`)
↓
●チョーチョ @sfjpHla8ko
返信先: @emishi55
それは草
↓
●ユーチューバーのエミシ @emishi55
返信先: @sfjpHla8ko
ハッ((((;゚Д゚))))!!
今夜、可愛い女の子が着るみたいなフリフリのお洋服着て寝たら誘われる可能性に気づいた!!!!!!
俺天才!!!!!!!
↓
●チョーチョ @sfjpHla8ko
返信先: @emishi55
やめろ、拷問屋敷の人を逆に視覚で拷問するのやめてさしあげろwwww
●ユーチューバーのエミシ@公式 @emishi55
そんなわけで、まだエミシは獄夢を見ていません!!
もし夢を見た、って人がいたら情報提供お願いします。
おじさんはお呼ばれしない可能性が出てきました(´;ω;`)
↓
●ネクロマンサー八世 @jnP5656
返信先: @emishi55
昨日の動画面白かったです、本当にありがとうございます!
見たら報告します!
↓
●秋津島さえこ @Akic_ssss
返信先: @emishi55
素敵な動画をありがとうございました。個人的には、この間みたいにちょっと怖い空気の動画も増やしていただけると嬉しいです
↓
●原稿やれ坂本 @skamoto_osi
返信先: @emishi55
獄夢ってどんなものなんですかね?
自分も見れなかったなー
また続きの考察とかあったらアップしてほしい
↓
●瑠璃色の梅子 @Ln5gDnnW
返信先: @emishi55
昨日、一緒に動画見た友達がやばい夢を見たって言ってるのでDMすると思います、よろしくお願いします。
獄夢ってやつかもしれません
友達鍵アカウントですが、対応してくださると恐縮です
***
「今のところ、エミシ本人は無事なんだ……何で私のところには来てるの」
「さあ。ただのランダムかもしれないから、必ずしも法則性なんか求めないほうがいいけど」
「そんな身も蓋もない」
朝の反応はあっさりしたものである。杏樹はため息をつくしかなかった。いや、あまり深刻な顔をされてもそれはそれで自分はパニクったかもしれないが。
――ファンや友達ともやり取りしてるけど、本当に何もなかったせいなのか本人は呑気ってかんじ。で、ファンの中にも見なかった人はたくさんいるのかな。
一人だけ、友人が獄夢を見たと証言している人物がいるが。それ以外の者達は、どんな夢か気になるとか、追加情報を待っていますとかそんなものばかりである。確かに、何万という人があれを見たわりには、ヒット率が低すぎると言わざるをえない。
そして、もしその低すぎるヒット率に杏樹がブチ当たったのだとしたら、あまりにも不運としか言いようがないのだが。
「まあ、可能性は色々考えられると思うわよ」
朝も朝で、何かを調べている様子だった。せっかくグラタンを頼んだのに(何でこのクソ暑い中でグラタンを頼むんだとツッコミたい)なかなか来なくて暇なだけかもしれないが。ちなみに、杏樹が注文したカレーもまだ来る様子がない。
「仮に、あんたが本当に獄夢を見たんだとしましょう。その屋敷ってどれくらいの広さだった?」
「え?そんなのわかんないよ。だって私の冒険、廊下をちょっと歩いただけで終わってるんだもん。全然探索なんか出来てないって」
「そりゃそうか。……いや、どんだけ大きなお屋敷だとしても、限度はあるって話よ。何万人も収容できると思う?ていうか、拷問屋敷の主って、エミシの話が本当なら多分一人なのよね?何万人も一気に捕まえてもねーってところあるじゃないの。あんたの見た拷問風景からしても、一人あたりに結構時間かけそーだしさ」
ようするに、と彼女はピンッと指を一本立ててこちらを見る。
「一気に何万人も動画を見て条件を満たしちゃったもんだから、順番待ちになってる可能性。最終的には全員拷問する気ではいるけど、呼べるのは何人かずつしかないからまだ呼ばれてない人がたくさんいる、とか?」
「そんな順番待ちは嫌だぁ!」
「そしてめでたく序盤で杏樹サンは呼ばれました、と。すごいじゃない、宝くじレベルの確率でしょ」
「それなら宝くじあたってほしいよー!」
やや控えめな声で悲鳴を上げる杏樹。いや、本当に正直な気持ち、こんな抽選に当たるならぜひとも宝くじに採用してほしかったと思う。年賀状のアレも、モトシックスも、今まで見事に一円も当たったことがないのだ。二度も数万円をゲットした朝とは違うのである――ああ、思い出すだけで羨ましい。
「で、そろそろ真面目に話すんだけどさ、杏樹」
そこで、急に真剣な顔になる朝である。今まで真面目じゃなかったんかい!と杏樹は腐りたくなる。というか、これは取材という名目であったはずだ。さっきから微妙にふざけてばかりで、ろくにメモも取ってる様子がないのだが大丈夫なのか、彼女は。
「いくつか個人的に気になってることがあるのよ。まず、エミシはどこからこの拷問屋敷の話を聞いてきたのかなーってこと。リクエストした人がいたからこのことについてまとめることにしました、みたいなこと書いてたでしょ?てことは、多分拷問屋敷の話って“知る人ぞ知る”都市伝説だった可能性が高い。だったら、私達にも新しい情報が調べられるかも。なんなら、エミシ本人にDM送って尋ねてみたら?あんた、獄夢っぽいの見てるんだから、メールしたら喜んでお返事くれるわよ、きっと」
「うう、そっか。じゃあ後でメールしてみる。……知る人ぞ知る都市伝説っていうけど、オカルト雑誌の記者やってる朝は知らなかったわけでしょ?」
「そこがポイント。あたしが知らないくらいマイナーだったってことよ。この一件を調べるにあたり、編集部の資料もひとしきり漁ってみたんだけどさ、拷問屋敷については全然出てこないの。過去に誰も聞いてない、誰も調べてないってことだと思うわ。ということは、この話の歴史は思った以上に浅いのかもしれない」
「ええ?」
杏樹は困惑するしかない。エミシの話が正しいのなら、拷問屋敷で事件が起きていたのは戦後すぐだったはずである。
それなら、その頃から恐怖の事件として語り継がれていてもおかしくないはずだが。
「気がついた?」
杏樹が何を疑問に思ったのか察したのだろう。声を潜める朝。
「戦後すぐに辺鄙な村にそんな馬鹿でかい屋敷があって、村人が次々拷問で殺されて、犯人もすぐ死刑になって……なんてことが本当にあったなら、もっと大騒ぎになっていて然るべきなのよ。なのに、新聞記事とか探しても全然それらしい事件が出てこないの。そもそも、この話の設定って結構滅茶苦茶じゃない?若い男が徴兵もされずに一人で洋館に生き残り、何故かお金が潤沢にあって拷問具を買い漁り、サイコパスだったもんだから村から次々人をさらって拷問して殺して……ってそんなことある?」
言われてみればそのとおりかもしれない。何で戦後すぐの、日本がまるまる貧乏だったはずの頃にそんなにお金が潤沢にあったんだ、とか。洋館なんて目立つものが空襲で焼けずに残ったのがすごいな、とか。まあ、ツッコミどころは満載である。
「エミシが話を捏造したかもしれないってこと?」
杏樹が尋ねると、そうとも限らないわよ、と朝は肩を竦めた。
「エミシも、その“誰かが作った話”を聞かされて信じ込まされて、そのまま動画にしたってだけかも。……ただ、あんたが集団ヒステリーじゃなくて、本当にやばい夢を見た可能性は高くなったわ」
「え」
「今夜もしまた夢を見たら、主から死ぬ気で逃げて。そして、私にまた連絡して。出来る限りのことはするから」
彼女が見せてくれたのは、さっきまでいじっていたスマートフォンの画面である。のぞき込んだところで、杏樹はぎょっとすることになるのだ。
「うそ」
「あんたが見た女の人。全身関節をねじり切られて殺されたって言ったわよね?……この人みたいに」
そこに書かれていたのは。自宅にて、両手首と両足首の関節をねじり切られ、腰が半回転した姿で見つかったという、若い女性の死亡記事だったのである。
『本日未明、自宅のベッドの上で
麦田さんは家族と同居しており、自宅には麦田さんのご両親と妹がいましたが、夜中に怪しい音などは聞いていないとのこと。部屋にも家にも鍵がかかっており、警察は自殺と他殺の両面から捜査しているとのことです。
ただ、麦田さんの傷は全て生活反応があり、人力で人の関節や脊椎を破壊することが難しいことから、なんらかの大掛かりの機械が使われた可能性が高いとみられています。
現状そのような機械は発見されておらず、近隣住民も不審な物音を聞いていない点から、警察は何者かが何らかの方法で侵入して夜中に麦田さんを誘拐した可能性もあると見て……』
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