第5話 双子の剣

  「スラング、悪いな。タイムトラベル可能とは、

   君達の種族は見た目と違いすごいな!」


  「まぁ、僕たちのマスターが凄いんですよ。」


  「マスターとは、今回の立案者なのか?」


  「ええ、近いうちに皆さんにご紹介できると思いますよ。

   ところで、中世の騎士の国に御目当ての人物がいるんですか?

   もっと強そうな歴史上の人物がいくらでもいると思うんですけど!」


 「まぁな、強さなら、戦国時代の呂布とかだろうな。でもそれだけじゃ

  足りないんだ。俺のこの魔聖剣カリブルヌスは、かつて双子の聖剣

  だった。」


  「双子、双剣ということですか?」


 「同じ剣だが、表と裏、陰と陽の関係かな。ある日、女神の一族オーケアニス

  がイングランドを訪れていると、数千人いるオーケアニスは、世界中の川

  や池や湖に住み着き、その地で名前を変えてその勢力を伸ばして。その中

  で最も魔力が強い仲の良い二人の姉妹がこの地の湖で暮らし始めた。」


  「それって、伝説の乙女ですか?」


  「ああ、湖の乙女だ。彼女に出会った人の口にする印象が正反対なのも、

   同じ顔の全く違う女神のせいだ。陰の力が強い女神が人に与えし聖剣が

   ここにありカリブルヌスで、陽の力が強い女神が与えし剣が最強の聖剣

   エクスカリバーだ。」


  「それじゃ、アーサー王が、バディ候補ですか?」


  「まぁ、急かすな。今回、俺が探したいのは、エクスカリバーの正当な

  持ち主に連なる者。今は亡き剣聖を見つけたいんだ。双子剣の片方は

  後世の弱き勇者気取りの人間が悪魔に負けて奪われたこの剣、魔の聖剣

  カリブルヌスだけど、この剣のもう片方の正統な持ち主アーサー

  が使っていたエクスカリバーは、おそらくもっと凄かったらしい。」


  「やっぱりアーサーじゃん。」


  「確かにアーサーは王の中の王と言われるくらい統治力があった。

   でも戦い、特に剣技においては騎士ランスロットが上だった。

   アーサーがエクスカリバーを託したランスロットが今回のバディ候補だ。

   もう一つの理由は、大魔術師マーリンがその命を削って発動した防御魔法

   がランスロットの防具、鎧と盾には施されているからな。こうなると、

   パワーとスタミナだけが自慢の呂布なんか相手にならない。

   それに俺は知りたいんだ。この双子の剣が共に揃って戦った歴史はない。

   どんな凄いことになるのだろう。」


   やがてアモンとスラングは、土がまだ乾いていない、ある墓地の前に

   降り立った。


   「さぁ、ランスロットの墓の前に来たよ。

    さっき埋葬されたばかりだから、魂はまだ近くのはずだよ。

    でもさ、どうして、生きている時の若き全盛期のランスロット

    ではダメなんだ?」


   「歳は転生で全盛期へ戻せるだろ。それの歴史への干渉は、避けたいし、

    ランスロットも死んだ後の第二の人生なら俺たちと戦ってくれるだろう

    と考えたのさ。」


    アモンは、悪魔の秘術で周囲の魂の姿を具現化した。


   ランスロットは、

   「僕は善い行いをしてきたつもりだが、地獄行きなんだな?

    悪魔が迎えに来るとは?」


   「ヤァ、僕はスラング、スライムという種族の生き物さ。

    君は地獄に行くんじゃないよ。まずは、彼の剣を見てよ!」


   アモンは、カリブルヌスを抜いて見せた。


   「それは失われし聖剣カリブルヌス?」


   「そう、そして君はエクスカリバーの選びし後継者!」


   ランスロットの魂は、少し考え、

   「このイングランドの地でとんでもない戦いがこれから起きるという

    意味なのですか?それゆえ、神は私に眠ることを許してくれないの

    でしょうか?」


  スラングは、

  「少し違うよ。この地を含めた全世界を救う戦いがあるんだ。

   そのために、君に異世界の日本へエクスカリバーを携えて

   転生してほしいんだ。」


  「敵は何者なのだ?天使が恐るる処とは聞いたことあるが、

   悪魔が恐るる処とは初耳だ。それほどの敵なのだな?」


  「間違いなく、そんな敵さ!

   どう、世界を救うかもしれない戦いだよ。助けてくれるかい?」


  「そんな大事を我ら騎士が背中を見せよう筈がないであろう。

   騎士として誓うよ!アーサー王の名にかけて、共に戦おうぞ!」



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