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それから漆黒の塔で魔道具作りの基礎を学び、設計図作り、道具の組み立て、魔石集め、道具と魔石を繋げる魔法陣の勉強をして簡単な物から作っていった。
初歩の魔道ランプ、魔道時計は簡単にクリア出来た。
私は魔道具作りの才能があったようでメキメキと上達していき、10才で魔道具に特化した賢者イーヴァルディを紹介され、彼女(男性だけど心は女性)は私の作った魔道具を見て本人が指導すると言ってくれた。
魔道具部門は下から魔道士➡魔道師➡魔導師➡魔導治師となっていて、いきなり賢者が指導してくれると言っても困惑するよ!
段階踏んで欲しい!
そんな私の心の叫びを他所に賢者イーヴァルディの元、上級の結界魔道具、転移魔道具も作れるようになった。
フレイヤは魔法に特化していて攻撃魔法、防御魔法のどちらも修得し、10年もすれば隠者ヴォルヴァに並ぶだろうと12才で言われる程の才があった。
凄いぞ、フレたん。
高飛車笑いはど下手だけど☆
そして三人目の悪役令嬢、ヒルデガルダは外では遊び好きの派手な令嬢だが、漆黒の塔では面倒臭がりな女の子だった。
どれだけ面倒臭がりかというとジャージを作ってあの人をダメにするソファでダラダラするのがこの世で唯一の至福と宣うくらいの面倒臭がりなんだよ。
そんな彼女だが三人の中で一番強い。
剣の才能は早くから突出していたし、魔法も攻撃だけならフレイヤよりも上。
三人で模擬戦をすれば勝率はヒルデガルダが断トツだった。
私も魔道具を使っていい線までいくんだけどなぁ~
ヒルダは面倒臭がりだけどやる気スイッチが入れば集中力は凄いし、根は真面目だから課題を出されればちゃんとやってくるんだよね☆
多分一番才能があるんだと思う。
ヒルダ曰く
「やらなきゃいけないなら如何に早く終わらせてダラダラできるかをいつも考えている。」
そうだ。
それで上達するんだから凄いよ!·····思考が残念すぎるけど。
二人には私が両親に前世を話した事は言わなかった。
フレイヤは家族に対して断罪後捨てられるのがわかっているから距離を置いているようだし、ヒルダの両親は彼女を駒扱いしかしないのでヒルダは家族を切り捨てている。
二人とも家族の話は一切しないから私もしなかった。
でもいつも彼女達に私だけ家族に話した罪悪感がある。
その考えが傲慢だとわかっていても心に棘のように刺さっていた。
賢者イーヴァルディは何も言っていないのに私の気持ちを何となくわかっているようで、
「家族の事情なんてその中に入らないと本当にはわからないんだから、何も言われてないのに他人があれこれ考えたってどうしようもないの。
相手が聞いて欲しいと思ったら聞いてあげればいいし、助けを求めたら手を差し伸べてあげればいいのよ。」
とアドバイス?をくれた。
「顔にでてましたか?」
「出てないわよ。
でもあんた達は家族の話は全然しないし、あたしがあんたに家族の事を聞くとちょっと言い淀むじゃない?
あんたのとこは仲良いから推測よ。」
私がここに両親を連れてきたのは漆黒の塔の人達は知ってる。
「ヨルは能天気に見えて考えすぎなのよ!
人生なんてなるようにしかならないし、自分の人生は自分で背負うもんなの。
友人ならよろけそうになった時に支えられるように見ててあげたらいいじゃない。」
辛辣だけど確かに今の私は自分だけで精一杯の未熟者だ。
それならフレイヤやヒルダが辛い時や悲しい時に肩を貸せるように、貸してほしいと思えるような人間になろう!
人生の目標が一つ増えてやる気が出た。
「師匠、ありがとうございます☆」
「お礼なら隠蔽と結界の同時発動ができる魔道具を手のひらの大きさで作って見せなさい。範囲は半径100mよ♪」
ちょっと待って!
私まだ結界一つで手のひら大の物しか作れないんですけど!
「お礼は形にしてちょうだい🎶」
取り立てが凄すぎる·····
鬼師匠のお陰で学園に上がる頃には何でも作れるようになり、漆黒の塔入りは確実となっていたのよ☆
私の婚約も14才で確実となっていたけどね~。
お父様がダグと婚約させないように頑張ってくれたけど、ヘルモーズ公爵家に目をつけられていたので引く手あまたのはずの
馬鹿みたいな話だけど10才からこんなんばっかなの。
この話を聞いた私はヘルモーズ公爵の残念な頭髪を全部引っ込抜いてやりたくなった。
そして14才で婚約の打診をしてきやがったわ。
その時に衝動的に脱毛魔道具を作った私は悪くない。
師匠に見せたら顔を真っ青にして髪の毛を確認してたけどーーごめんね、師匠☆
ゲーム開始は学園に入った15才の入学式から一年間。
ダグのというか三人のヒーローとヒロインの出会いは入学式に転けそうになったヒロインを抱きしめてどちらも胸がトゥンク♡する。
ゲーム会社の手抜きのようだが、一応場所は変えている。
ダグは校舎近く。
私と入学式の会場に向かう時にヒロインが転けそうになり私をつき飛ばしてヒロインを抱きしめてトゥンク♡
突き飛ばされ尻もちをついた私は「酷いですわ」と言うんだけど恋の花吹雪舞う二人にボソボソ声なんか聞こえるはずもなく·····
足を痛めたヒロインをダグが保健室に連れて行った。
ーー尻もちついた婚約者を置いて。
これってよく考えたら酷くない。
「よく考えなくても酷いですわよ。」
「今更?」
そして二人も酷い·····(涙)
声に出しちゃってたわ~。
「そ、それよりフレたんの頼みって何?」
今日はフレイヤが頼みがあるって漆黒の塔に集まったんだよね。
フレイヤは苦しそうな表情で唇を噛んでから意を決したように言った。
「わたくしの階段落ちイベントがあるでしょ。その時にわたくしも一緒に落ちてフォルセティの下敷きになるから、その数秒間だけここと同じ空間魔術の魔道具をヨルに作って欲しいんですわ。
ヒルダには落ちた時に私の心肺が停止してたら蘇生をお願いしたいのです。」
私とヒルダはその発言に一瞬固まってしまった。
一緒に落ちるって何考えてんの?!
「何言ってるか分かってる?
一緒に落ちたって強制力が働くに決まってるじゃない!
抑々なんで一緒に落ちなきゃ行けないのよ!!」
「ヨルと同意見だね。
相手はフレイヤの婚約者に粉かけて略奪して笑いものにしたんだ。
痛い目みても自業自得だよ。」
いや、階段落ちて重症が自業自得とは思わないけど、フレイヤが一緒に落ちて庇う必要は無い。
「わたくしの決定的な瑕疵になってしまうのを避けたいのです。
一緒に落ちて相手は無傷でわたくしが重症を負えば、障害事件ではなく婚約者と浮気相手の修羅場の末の事故となりますわ。
お願い致します。
どうか協力してくださいませ!」
気持ちは分かるけど友達が死ぬほどの重症を負うってわかってるのに、受けられるわけないじゃない!
「女狐が落ちて重症になっても治癒魔法で治したらいいじゃない!」
今では隠者ヴォルヴァに賢者に推薦される程の知識と緻密な魔法を使えるフレイヤは超難易度の治癒魔法を習得している。
「治癒魔法を使っている間だけ空間拡張魔術を使えばいい。」
ヒルダも私の案に乗ってくれた。
でもフレイヤはそれでは意味が無いと言う。
「傷が治ればまた階段落ちをしようとしますわ。
『階段から落ちて重症を負い生死を彷徨う』がゲームのシナリオなんですもの。
ここまででお二人も気づいたと思いますが、強制力は人を操る事は出来ますが時間を戻したり人や物を直したりは出来ないのです。
ですからこの方法ならわたくしが大怪我をすればもうわたくしを操るのも無理になります。」
「それでも私はそんな魔道具なんか作らないから!!」
フレイヤの言葉に怒りが湧いた。
「フレイヤは自分を守りたいからってヨルに一生消えないトラウマを残してもいいって言うの?
話にならないね。」
ヒルダは怒りを押し殺した声でフレイヤを責め、フレイヤはハッとしたように私を見る。
「ごめんなさい。
ヒルダの言う通りだわ。
わたくしは自分の事しか考えてなかった。」
フレイヤは辛そうな表情で私に謝ってきた。
「私の事はいいんだよ。
でもフレイヤが大怪我するのは嫌なの。
まだ2ヶ月あるんだから一緒に考えよう。
お願いだから諦めないで。」
私の言葉にフレイヤは曖昧に笑うだけで肯定も否定もしなかった。
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