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高熱での前世記憶復活、乙女ゲームの悪役令嬢で強制力があると知ってから、死亡エンドを回避するべく考えていたが一人で考えてもいい案は浮かばなかった。
だから家族に聞いてみた。
~お父様~
「結婚したくない?
なんだ、だったら結婚しなきゃいいじゃないか。
ずっとお父様の傍に居たいんだな~🎶
お父様もヨルとずっと一緒に居たいから構わないぞ~♡」
~お母様~
「結婚したくない?
もう甘えたさんね♡
うちは派閥に入っていないし、したくないならいいんじゃない。
でもヨルちゃんの王子様が迎えに来たら考えが変わるかも~♡」
~お兄様と弟~
「結婚したくない?
じゃあ家にいたらいいじゃないか。
政略結婚なんてしなくてもスクルド家はやっていけるんだから。
お兄様と家業を一緒にやっていけばいいしな~🎶」
「あねうえとずっといっしょにいれるの?
やったー🎶」
·····「結婚しない方法」を聞いているのに何故「結婚したくない」に変換されるのか。
でも家族はこんな根暗な私を愛してくれてるって再確認できて嬉しい☆
だから余計に禁忌魔法である呪いを行って家族に迷惑はかけれない。
家族が駄目なら使用人に聞いていく事にした。
~家宰~
「結婚しない方法?
·····お嬢様、そんな悲しい事を仰らないでください!
いつかお嬢様の良さをわかって下さる方が現れますから!」
~侍女長~
泣き崩れた·····ごめんね。
他にも聞いたけどショックを受けるか、家宰のような発言をするだけで参考にはならなかった。
だけどこんな俯いてぼそぼそしか喋らない子供でも疎ましがられないってスクルド家の使用人凄いな。
乳母に感謝の気持ちを伝えたら予想外の言葉を返された。
「スクルド家にたまにお嬢様のような恥ずかしがり屋さんが生まれるんですよ。
特に闇の魔力が大きい方に現れるそうです。
闇の恩恵を受けているスクルド領の民は外見ではなく中身を見るようになっていったんですよ。
お嬢様は優しい感謝の心を忘れない良い子ですからね。」
恥ずかしがり屋さんって·····受け止め方がポジティブだ。
それに外見じゃなく中身を見てくれているのに気恥ずかしいけど嬉しかった。
「ありがとう☆」
顔を上げて笑って言いたいのに、俯いてぼそぼそ声になってしまう。
それでも乳母は嬉しそうに笑って「どういたしまして」と言ってくれた。
そんな深イイ話に浸っていたけど解決策にはなっていなかったのよね~。
それからも探してたけど見つからず一年経った頃、家族団欒していて漆黒の塔の話が出た。
「漆黒の塔って何ですか?」
私が聞くとお兄様が答えてくれた。
「漆黒の塔は魔法や騎士、魔道具の偉い人達の事だよ。
大陸の真ん中にある魔の森に結界が張ってあるだろ。
それを見守ったり中にいる魔物を退治したりするんだよ。」
その話を聞いて弟がはしゃいで
「ぼくもしっこくのとうにはいりたい!」
と答えた。
お母様は慌てて駄目出しをする。
「漆黒の塔に入ったら家族と離れ離れになってしまうのよ。
国籍も無くなってしまうから世間からスクルド家の者と認めて貰えなくなるの。
そんな寂しいことは言わないで!」
お母様はポロポロと泣き出して、弟が急いで入らないと言って慰めていた。
私は国籍が無くなるという言葉に衝撃を受けた。
国籍が無くなるなら婚約しなくてもいけるんじゃない?
強制力が働くかもしれないけど試してもいいかもしれない。
次の日、領地の図書館に行き漆黒の塔について調べて見た。
その時に【千里眼】も知ったのよ!
【千里眼】の〈
一つでも持っていれば漆黒の塔でも保護してくれるとあった。
なら【千里眼】を持つ者として漆黒の塔に行って保護してもらおう。
上手く行けば漆黒の塔に入れて婚約しなくても良くなるかもしれない!
図書館から漆黒の塔に向かう馬車の中でドキドキしながら早くつかないかとずっと外を見ていた。
漆黒の塔はどこの領地にもあるけど、今まで気にも止めなかった。
目的地に着いた時もこじんまりした建物にこれ?と失礼な感想を持ったくらい。
三階建ての黒い建物に二人の門番?衛兵?がいるだけだもの。
大陸中にあるから予算の関係でこじんまりしてるのかなと思い、馭者に待っててもらい進んでいくと門番?が剣を突きつけてきた。
「怪しい者じゃありません!私は【千里眼】です。漆黒の塔に保護して貰いにきました!」
門番らしき人はピクっと動いただけで剣を突きつけたまま中に確認にも行ってくれなかった。
どうしたらいいかわからずもう一度伝えようと口を開いた時に建物の扉が開いて藍色のローブを着た女性が出てきた。
「どうぞ中へ。」
中に入った途端、自分の体から何かが剥がれるような感じがして体が軽くなった。
そして周りを見渡すと外から見た建物の中とは思えない広さと豪華さに驚いた。
「凄い広い!!」
自分から出た声とは思えない程の大声に吃驚してしまう。
私ってこんな声だった?
しかも顔が上がってる!
「えっ?なんで??」
思わず声に出てしまったのも気づかないほどパニックになっていた。
「この中は空間拡張魔術が施されているのよ。
外と次元が違うの。」
次元が違う?
この中はアスガルズ王国じゃないって事よね。
次元が違えばゲームの強制力は働かないんだ!!
「これは魔法ですか?!」
勢い込んで聞いた私を女性は苦笑しながら教えてくれる。
「魔道具を使って全ての漆黒の塔の入口がここに繋がっているのです。
空間拡張魔術も魔道具を使っています。」
そうなんだ。
予算の関係で建物がこじんまりしてるのかと思ってたけど、ただの入口だったのね。
なんかすみません。
心の中で謝りながら応接室に案内された。
中には初老の黒灰色のローブを着た男性が笑顔で自己紹介してくれた。
「やあ、小さな【千里眼】殿。わしは隠者ヴォルヴァ。
名前を教えてくれるかな。」
私は急いでカーテシーをとり挨拶を返す。
「初めてお目にかかります。
スクルド侯爵家の娘、ヨルズノートと申します。」
まだ自分の口から出てくる音になれない。
ボソボソ声しか出した事がなかったから私ってこんな声だったんだ。
「【千里眼】と言われたが、詳しく教えてくれるかな。」
私は隠者ヴォルヴァと藍色のローブの女性ヴァルキュリアに前世の世界と乙女ゲームの話をしたんだけど、乙女ゲームって言ってわかってもらえるかな?
説明し終わってからちょっと不安になったけど、隠者ヴォルヴァはこっちが驚愕する発言をしてきた。
「実はその話を聞いたのは君で二人目なんだよ。」
二人目って、私以外にも異世界転生してゲームを知ってる子がいるの?!
「誰ですか?会いたいです!会わせてくれますか?」
隠者ヴォルヴァに飛びついて必死に訴えると、笑いながら
「相手が会いたいと言ったら会えるよ。
今日ちょうどここに来るから聞いてあげるから落ち着いて待っていなさい。」
異世界転生仲間が来るまで緑葉の間に案内されたんだけど·····部屋の中緑だらけ!
椅子とテーブルはかろうじて木でできていたけど壁も葉っぱ、本棚も葉っぱ、ベッドも葉っぱなの?!っていうか何でベッドが置いてあるの?
案内してくれたヴァルキュリアが出ていった後、ベッドを触ってみると蔦と葉っぱの骨組みで上下の布団は羽毛だった。
所々に置いてある特大クッションは前世であった人をダメにするソファと同じ感触だー!
部屋を観察しているとノックの音がして入ってきたのは私と同じ年齢の超美少女だった。
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