第7話 親友殺しと血業式(ブラッディ・パレード)

 時は8月21日まで遡る。これは本来出すはずの動画を出さなかった幻の動画。

 俺は親友の一応動画として残したやつを見ていた。

 いつもの挨拶から始め、やつを拷問していく。やつは知らない。早く解放しろと言うばかり、だから........。

 8月21日。俺は涙を流しながら親友を殺した。

 親友と聞くと見栄えがいいように思えるが..........実際は〝ちょっとばかり仲良くなった友達″に過ぎない。

 そう思ったのはいつだっただろうか?今となっては分からない。

 でも俺は許せなかった。

 親友の裏切りに。やつらの仲間となった一人の人間に。

 これは夏休み前の時だ。親友の阿部 恭也(あべ きょうや)に誘われていつもの公園へ行った。

「お?来た来た」「全く........遅すぎて家まで行こうと思ったよ」

 言葉だけならただの会話に見えるがそれは違った。

「え..........?」

 目の前にいたのは学校でよく他の生徒へいじめをしていた。岸田とやつ.......赤城 周人(あかぎ しゅうと)がいた。

「阿部。なんでこんなに遅いんだっ!」

 その言葉とほぼ同時にやつの右拳が阿部の顔に行った。「・・・」と無言を貫く阿部に痺れを切らしたのか、

「まぁいい。おい■■。俺は今、ものすごーく機嫌が悪いんだ。だからお前......俺のサンドバックになれ」

「.......は?」

 次の瞬間俺は殴られた。その一発は物凄く重く、自分はただ身を縮め、おなかを抑えるだけ。

 それでも蹴りや殴りは止まらなかった。

「おい阿部、お前もやってみろよ」

 何よりきつかったのが無言のまま阿部は俺の右頬に自身の拳を入れてきたことだ。

 それはなぜか痛かった。重かった。これ以上ないくらいに。

 俺はしばらくそのまま殴られ蹴られ、要が済んだのか二人は帰り、そして「.....ごめん」の一言を言って阿部は帰っていった。

 それから家に帰って傷の手当てをし、その後........惨めに泣いた。

 親に話すことは怖くて出来なかった。

 8月21日、俺は彼に久しぶりに遊ばないか?とメールを送り、彼はOKを出したから今彼は俺の家にいる。

 久しぶりに見る彼は「・・・」やっぱり無言のまま。

 俺はお茶の中に睡眠薬を盛り、彼を眠らせて、拷問部屋へ連れ込む。

 念のためカメラに残そうと寝てる間に挨拶を終わらせて、彼が起きるのを待つ。

 彼が起きたのは意外に早く取り始めてから30分後だった。

「.......ここどこ?■■?」

 彼が俺の名前を呼ぶのに今となっては吐き気しかしない。

「ここは〝拷問部屋″だよ」

 俺は彼に言う。

 しかし、俺にとってこの部屋を見つけたのは単なる偶然だった。

 前の人が作ったのかそこはおそらく用途は貯蔵室。地下に作られ、壁は鉄筋コンクリートの壁で、両親はこの部屋のことを知らなかった。

 初めは両親に伝えようと思ったが、俺はその時思った。

 ここに秘密基地を作れば......と子供ならだれもが好きな秘密基地。

 俺は親友にこの部屋を見せて、彼はこう言った。

「いいね」とその後、誰にも知られずにその部屋は秘密基地と化した。

 でも.......今となってはただの拷問部屋。

 彼はきっともう忘れてるだろう秘密の基地。

 俺はさっそく彼にこう言った。

「ねぇ、なんで前遊んだ時あいつらが居たんだ?」

「知らん。それより早く解放してくれ腕が痛い」

 彼はそう言ってこの状況になんら違和感を感じてなどいなかった。

「あの時、なんで岸田や赤城が居たんだ?」

「知らん、いいから早くこの縄をほどいてくれ」

 彼は言わない。でもきっと彼は忘れん坊だから覚えても無いんだとこの時点ではっきり思った。.......しかし、

「ここ........懐かしいな」

「......え?」

「ほらここさ?俺らが前に秘密基地にしようとか言ったところだろ?」

 なぜそれを覚えているのか分からない。でも.......なぜか俺は涙を流してしまった。

「でもなんで秘密基地が完成しなかったんだっけ?.......あ」

 思い出したかのように彼は言う。

「あの時、俺は赤城や岸田に虐められてたんだ。それで俺......〝拓也″(たくや)を.......」

 身代わりにしたと彼ははっきり言った。でもなぜか先ほどまで感じていた吐き気など無く、自分の名前を呼ばれてもそれは無かった。

「ごめん拓也....俺はあの時、あいつらに言われてお前を殴った」

あの時のごめんはそれを言いたかったのか分からないだけどそれが嘘じゃないと俺は思ってしまった。

「だから償いをさせてくれ」

 それは本来"虐めが無ければ壊れない友情"。

 俺はナイフを手に持ち、泣きながらそれを見せる。

 彼は頷き。静かに目を閉じる。

 心の中で俺は言う(さようなら、最高の親友)。

 次に、彼の胸にゆっくりとナイフを突き刺して、彼は痛そうに「ぅ」と呻いて、苦しそうに縛られてる腕を動かし、しばらくして彼は息を引き取る。

 何故涙が出たのか分からない....でも"これで最後"だからと今は胸から暖かくて紅い液体を流す彼の死体を見て大粒の涙を流す。

           ※

 体育館へ行くと....そこには大量の骸と.....ステージの上に後ろを向いたやつがいた。

           ※

9月1日 ようやく長い復讐に終止符を打てる。俺はその喜びとここまで頑張った自分に称賛して、生徒を待つ。

 本来であれば何も起きない始業式、だが今、校舎内にはさまざまな仕掛けが施されている。

 その1.各教室のドアには自動のギロチン台を置いており、最低でも各2人は死者が出る仕組みだ。

 その2.校内のあちこちに監視カメラを用意、どこに誰がいるのかまで分かる。

 その3.もしも逃げられたら困るので、あらかじめ裏口(先生などが使う玄関)にはカギをかけた上で鍵穴を粉々にし、生徒玄関には人知れず睡眠役入りの弾を自動で出す銃をサイドに置き、リロード要らずのに改良した。

 その4.体育館の上に一定範囲に水を撒く装置を取り付け、水ではなく、アルカリ性の強い液体にし、さらに横には大量の酸性の強い液体を出すでかい水鉄砲もどきを置く。

 その5.それでも足りないと思い、職員室には食欲旺盛のウジ虫を大量にばら撒く。

 その6.当日休んだ生徒にはあとで直接向かい、殺す。

 その7.睡眠薬入りの弾を躱し、逃げようとする奴には鉛玉を頭にぶち込む。

 これで俺の復讐は終わる。その金は今は亡き父と母のデビットカードから出し、総額は分からないが二人の貯金のほとんどを使ってしまった。

 そのお陰でいいものが手に入った。父と母の子に生まれて良かったとこの時、初めて思った。

 そして、この日、俺は沢山の人を殺した.........でもほとんどの奴は始めのギロチンで頭と胴を離して死んだ奴が158人。職員室へ行き、ウジ虫たちの餌となって死んだのが37人。睡眠薬で眠った人+体育館で骨までドロドロに溶けた人が123人で休んだ人が23人、そして俺の鉛玉で死んだ人が10人だった。

 この日、俺以外の全学年の生徒。計、351人が死んだ。

 それでもなぜか俺の心は満たされなかった。なんで満たされないのだろうか?赤城やその他のいじめに関わったやつは俺を虐めて満たされた。ならなんで俺はそいつらを殺しても満たされないのだろう?後に残るのは嫌と思うほどの静けさで、その答えなど誰にも分かるわけが無かった。

 9月2日 後片付け

 次の日はとにかく忙しかった。なぜなら俺を捕まえようとするやつらがそろそろ動くはずと考え、血で赤く染まった各教室の掃除に死体を体育館へやるなどの作業、そして親御たちを殺すなどしてあちこちに血だまりが出来ているので俺はひどく手を焼いた。それでも3日もすれば親たちは警察を呼ぶ。だから俺はあちこちにウジ虫をやり、俺は屋上で待機していた。俺を逮捕できる最大のチャンスを与えるために。

 それでも生き残りはいなかった。面倒だと考えていたパトカーで来る奴はいなく、田舎というのもあり、そいつらは自転車で来た。都合が良すぎると思ったがどうでもよかった。その日も次の日も飽きずに警察は来る。だからウジ虫が喜び、喰らい、掃除をしてようやく事が全て収まったのは9月8日だった。結局殺した人数は親や警察を含めてざっと700人以上は餌になったと思う。校内には全面見渡す限り血だまりがあり、それを見れば一目瞭然だった。きっとやつらは3分に6人のペースで喰われただろう。一回あれに食われたことがあった。その時は腕だからよかったものの剝がすまでの1分の間に骨が見えるところまで喰われるほど、その勢いはやばいものだから。誰も抵抗できなかったと思った。喰われた箇所がもしも指だったらきっと今頃5本から〝4本″になっていたと考えると怖いと少しだけ感じた。

 血は専用の洗剤などで何とか落ちたがそれでも以外に力が要るので大変だった。

 そしてその2日後にようやく初めて車で来る奴がいた。

 その頃にはまた殺したいと思うほど今の俺は衝動に駆られている。

 それを俺はなんとか抑え、放送室へダッシュし、伝え、いち早く体育館へ向かった。

                ※ 

「.......何人殺した」

 俺は静かに奴に向かって言う。

「1000人以上は殺した」

 俺はその言葉にぞっとする。そして俺は見誤ってしまった。何故やつに少しでも共感の情を覚えたのだろうか?そして俺は今更ながらにこれが自身の勝手な行動に当てはまること、退職の危機もあることなど忘れ、質問をしていく。

「なんでこんなことをした?」

                ※

 その言葉で俺は思ってしまう。こいつはもしかして俺の話を信じてくれるのだろうか?今まで一人で苦労してようやく復讐を達成できた自分の話を、一人の人間として聞いてくれるのだろうか?そんなことを考えるよりも先に俺は言葉を放った。

「俺はこいつらが〝化け物にしか見えなかった″」

                ※

 ある人は言った。人間には防衛本能というのが存在すると。それは自分の身に死に似た恐怖を覚えると人間は一時的にあらゆる機能が活性化すると言われている。

 例えば生殖本能、男は子孫を残そうと強力なDNAを持つ精子を作る。

 例えば身体機能、男女ともにその場から逃げようとする脚力や体力。守ろうとする防衛本能により、逃げの速さや腕力などのあらゆる身体強化が起こる。

 しかし、後者はなかなかの稀にしか起きないと言われている。その理由には前者の生殖本能が強くなるためと言われている。

 やつはどちらなのだろうか?

 やつは俺の方へ体を向ける。見ると体のあちこちに絆創膏が貼られており、左目には眼帯、その痛々しい姿に俺はどれだけの苦痛を味わったのかがわからない程、それは見れなかった。そしてあの発言の意図がようやくそれで分かった。

「待て、動くな。まずは持ってるはずの銃を遠くへ投げ捨てろ」

 言われたとおりに投げ捨て、両手を上げる。

「お前はこれが欲しいだろ?」

 やつはそう言って、あるUSBメモリーを見せる。

 ここに来て腐臭など気にしていられないほど俺は余裕が無かった。

「これにはお前たちの重要なデータがある。もとのpcからは削除した」

 あぁなんで俺は独りで来たんだ。俺は自分の失態を罵り、そのUSBメモリーを見る。

「お前は誰なんだ?」

「俺は.........清水 拓也(しみず たくや)だ。お前の名前も教えろよ」

「俺は原田 正孝(はらだ まさたか)、刑事だ」

 そこで俺は〝清水″という名字にある一人の友を思い出す。

「..........もしかして、清水 尚也(しみず なおや)の......子供?」

「あぁ......そうだ」

 俺はそこで昔の記憶が蘇る。〝清水 尚也″と何故俺がこの職に就こうと思ったのかについてのある記憶に。

                 ※

 そいつから父の名前が出てきたことに俺は驚いた。なんでこいつがお父さんの名前を知っているのかを俺は人知れず考える。

―――――――――――9月1日から9月8日の事を俺は血業式(ブラッディ・パレード)と呼んでいる。その光景は戦場のように汚く、美しく、悪が消え、また新たな悪が現れるその式はすでに終わっている。俺は..........今、何をしたいのかな?

 その問いに答えられる者はいない。彼の意見もきっと時の流れによって流されるものなんだと思った。それなら残せばいい。圧倒的恐怖を圧倒的立場を見せればいい。

 その思考は何処からか出てくる。あぁそうすればいいか。俺はこれからこいつとある契約をしなければいけないと悟り、人知れず交渉材料を脳内で集めていた。

 こんなところで終わってっはいけない。どうせやるのなら徹底的に殺らないと。

 俺はこんな時でもつい顔がにやけてしまう。あぁもういいじゃないか。それでいいじゃないか。俺はこれから誰もが恐れるような存在に.........なりたい。いやなるんだ!絶対に!

 その決意とともにこの日記を終わらせる。——————————————————

 9月10日 新たな目標が出来た。


 

 

 

 

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