第3話 彼にかけられたのは......?

 家に帰り、スマホを見ると新しい動画があがっていた。タイトルには8月3日と書かれていて、また例の殺人犯の動画と分かり、すぐにそれをタップした。

 「今回の犠牲者は浜田です。彼は僕に水をかけてきました」

 そう言って、やつは右手にバケツを持っていた。浜田という少年にカメラを向けられ、見てみると、首から上にかけて丸い器を付けられていて、頭上には一つの小さな穴が開いている。

 「今回はこのバケツに入ったスライムを彼にかけたいと思います」

 浜田の顔がどんどん青ざめていく、すると

 「や...やめて...。なんでもするから」「“なんでも”?」

 やつの顔は覆面で隠されていて表情は見えない。でも....これから何を言うのかはだいたい想像がついていた。

 「なら......“死んで”」「....え?」

 そう言い残してやつは小さな穴に水受けのようなものを刺すとバケツを少しずつ傾ける。浜田が首をぶんぶんと揺らしても少しずつスライムは入って来る。

 「あ....い゛や゛だ.....じにだぐない....おがあさん、おどうざん」

 浜田の口にまで来て、彼はどんどんバケツを傾けていく

 「ん゛ん゛....ん゛....んんんんん」

 いよいよ彼の鼻先までスライムが来ている。するとやつはバケツを180°傾けてすべてを流し込んだ。

 呼吸はもうできないくらいにまでスライムは来ている。息を吸えば気管にスライムが入り、呼吸困難に陥る。彼は苦しそうに悶えている。だが手足は縛られ、椅子を傾けようものなら奴がナイフで首の大動脈を切るそぶりを見せていて、彼はついに諦めて、静かに息を引き取った。

                 ※

 なんで虐められることになったのか俺は最初、知るはずが無かった。....でもある日、一人の友達に誘われて公園に行った時だった。奴らが待ち伏せしていたんだ。

 友達は.....“共犯者”だった。

 その後、俺は友達と奴らに殴られ蹴られ唾を吐かれて、ボロボロの姿で家に帰ることになった。親に話すことなんてできない。だって話したら“殺される”のだから........。

 そして今に至る。俺はこの夏休みまでに復讐を完遂させないといけない。なぜなら—――――――。

 目覚めはじりじりと鳴る目覚まし時計の音だった。今日は8月21日。あと3人で俺の復讐は終わる。警察は気づくはずが無かった。なぜなら初めての動画を投稿したのが昨日....そして俺が殺した人数は20人。時間をずらして投稿したのだから、まだ大丈夫。今日の日記。“親友を殺す”

                 ※

 「これで今日の動画は終わりです。ご視聴ありがとうございました」

 すべて見終わるとそこには悲しみ、怒りなのか分からないドロッとした何かが込み上げていた。

......明日この動画とあの写真と共に出勤しよう。これ以上、"罪の無い人"を死なせないために。

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