第2話 隠された愛
「今夜の犠牲者は桜田でーす。この人はいつも僕に死ねとかキモいとか言ってきました。なので、舌を切ってやろうと思いまーす」
二人目の犠牲者は女の子だった。その顔には涙がポロポロと流れている。
「やめてよ!この馬鹿!私はあなたのことが好きなの!」
嫌よ嫌よも好きの内とはこのことか、しかし
「じゃあ聞くけど、なんで僕がいじめられてた時、助けなかったの?」
彼女が真剣に気持ちを伝えても、彼には通じない。彼の心のどこかにあった純粋さは環境の悪化で消えてしまったみたいだ。
「怖かったの、あなたを助けたかったけど怖くて出来なかったの」
彼はその言葉を聞くなり、嫌がる彼女の悲鳴とともにその舌を切ってしまった。
「.....これからこいつを“また”湖に放り投げてきます。それでは本日の動画はこれまで!ご視聴ありがとうございました」
少しの間が空いて放った言葉からは何を感じているのか読み取れない。だけど俺はこいつを捕まえないといけない。警察とは私情を捨てて、悪い奴には何かしらの罰を与える職なんだから....でもこれを見ると少し考えてしまう。もしも彼がいじめられなければ、彼女がもう少し早く告白していればその気持ちは伝わってたのだろうか?
考えすぎかと自分をすこし馬鹿にして、俺はあの琵琶湖にどうやって入るかを考えながら次の動画を待っていた。
※
今回の犠牲者は桜田にしよう。あいつはいつも俺に向かって罵詈雑言を吐いていた。それなら殺害ターゲットに当てはまる。俺はすぐに行動に移った。
あいつはスイーツに目が無かったはず、こっそり睡眠薬を盛っていつもの撮影場所まで移動させるか。そう考えた俺は母からお小遣いを貰い、今話題のスイーツを買って、桜田に食べに来いよと言うとものの数分で来た。
それからはもう早かった。睡眠薬はばっちり効いてて、3時間後に目が覚めるようになっている。母は今夜の夕食を作るなり仕事へ向かうから撮影時に家には誰もいない。今回は舌を切ることにしよう。あの悪い舌を切れば桜田もあの世で反省するだろう。
三時間後
桜田は少し戸惑っていた。「え?何で縛られてるの?てかここはどこ?」
正直笑いこけそうなほどいまの彼女はみじめに感じていた。これから死ぬ奴に時間など無い。カメラを回してさっそく撮影に入った。
※
捜査一課長に見せても信じてもらえないなら琵琶湖を管理する会社に事情を説明して入らせてもらうことにした。管理会社はすんなりOKを出してくれた。
それから俺は水中カメラを買い、水中をくまなく捜索することにした。水中カメラの値段は.......聞かないでくれ。
水中は濁っていてなかなか見つからなかったがようやく死体らしき影を見つけた。
※
撮影も終わり、今回の動画を編集して明日の犠牲者を考えていると、「私はあなたのことが好きなの!」という幻聴、彼女はもういない、俺の事が好きならなんで助けてくれなかったのか、今まで散々罵詈雑言の雨を降らされた俺の気持ちを考えたことはあるのだろうか?それを聞く時間なんてあるわけない。この夏休みの9月10日までに、俺は復讐を完遂させないといけないのだから。
※
あぁ、何という事だ。俺はその光景を見て、それしか言えなかった。動画は二本で今のところ犠牲者は2人だと思っていた俺が馬鹿だった。タイトルの日付は8月1日と8月2日......水中カメラ越しの視界にあった死体は20......つまり“8月20日まで一日一人ずつ人を殺している”ということ、俺はそれをキャプチャーして、これからどうすればいいのかを考えることにした。
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