114話 戦争

 なぜかソビラトからの宣戦布告せんせんふこくがあった。バビリニアに指示されてソビラトが動いたのだろう。

 宣戦布告せんせんふこくの内容を噛み砕いて言うなら、『アクセプトという国を作ったらしいけど、その領地は本当にお前のモノなのかよ? 俺達のモノじゃねぇーのか? 領地を勝手に奪ってんじゃねぇーよ。ブっ殺すぞ』みたいな内容である。


 宣戦布告の内容は、国民に戦争の内容を示す役目も果たす。

 隣の国が俺達の領土になる国を奪った。だから奪い返す、と国民に説明しているのだ。

 でも内容自体は嘘である。国民を動かせる内容なら何でもいいのだ。


 ソビラトはバビリニアに操られているだけだろう。本当の目的はバビリニアが星のカケラを手に入れることである。

 そしてバビリニアは通貨発行権つうかはっこうけんを独占したいのだ。


 宣戦布告と同時に大きな魔力弾がソビラトから放たれた。

 魔導師達を集めて魔力弾を撃っているのだろう。だけど無駄だった。レベル99になった俺は国全体に魔力攻撃を通さない結界を張っていた。


 魔力弾に意味がないことがわかると攻撃が止んだ。


 そしてソビラトから騎士団がやって来る。

 敵の騎士団と対峙したのはアクセプトの騎士団だった。


 カヨはソビラトからの宣戦布告を聞いて飛んで行ってしまった。

 チラッと後ろを振り返っただけで何も言わずに彼女は行ってしまった。

 カヨの青いドレスを着た後ろ姿が小さくなるのを俺は見続けた。


 カヨがソビラトの勇者を倒したのは魔力感知でわかった。ぶつかり合っていた大きな魔力が1つ無くなったのだ。


 それと同時に正義のヒーローであるバビリニアが戦争に参加してきた。


 バビリニアの騎士団と勇者がコチラに向かって来ているのを魔力感知でわかった。


 表向きは同盟国を助けるヒーローのように見えるだろう。

 プロダガンダである。

 同盟国を増やすつもりで正義のヒーローごっこをしているのだろう。



「俺はミナミを取り返して来る」

 と仲間達に伝えた。

 心配そうにアニーとナナナが俺を見ていた。

「大丈夫」と俺は言った。


 それでもアニーとナナナは不安そうだった。


「大丈夫じゃろう」と愛が言う。

 彼女は赤ちゃんを抱っこしていた。

「旦那様に勝てる奴は、もうこの世界にはおらぬ」


 バランとチェルシーは呑気にチェスをやっている。

「何度言ったらわかるんだよ。俺の番の時はお前が動かすんじゃねぇ」と猫が怒鳴っていた。

「すまん」とバランが謝っているけど、バランにチェスが出来るのか疑問である。


 そして猫がチェスの駒を投げてコチラを見た。

「お嬢ちゃん達、心配する必要ないぜ。俺だって小次郎がチートカスになったことがわかるもん」

 

 チートカスって何だよ。初めて聞いたわ。


「お土産よろしく」とチェルシーが言った。


「ちゃんと持って帰って来る」と俺は言った。


 そして俺はバビリニアに飛んで行った。


 バビリニアに向かう途中に、俺が張った結界を上空から壊そうと攻撃魔法を飛ばしている勇者がいた。

 顔がニキビ面の中学2年生のような勇者である。

 

 俺が飛んで来たことに慌てたのか、上空に向かって中2勇者がファイアーを出した。

 なにをやってんだろうコイツ?


「おま、お前はアクセプトの勇者だな?」

 と中2勇者が言う。


「もう勇者じゃねぇーよ。王様だよ」と俺は言った。


「残念だったな。王様になったのに、ここで殺されるなんて」

 と中2勇者が言った。


「俺の封印していた剣を見て、生きていた奴はいない」と中2勇者が言った。


 俺は身構えた。

 封印していた剣?

 なんかヤバそう。


「我が剣よ、闇から現れよ」

 ニキビ面の勇者がアイテムボックスから魔剣を取り出す。

 たしかに魔剣である。だけど、そのレベルの剣は俺でも持っている。


 もしかして封印ってアイテムボックスのことだったのか?


 中2勇者が剣を上げて俺に向かって来る。

 俺には彼がスローモーションに見えた。

 

 彼の剣をかわして、中2勇者にチョップした。

 中2勇者は、それで気絶したらしく地面に向かって落ちて行く。


 地面に落ちる前に、彼を捕まえて怪我しないように地面に優しく置いてあげた。


 改めてバビリニアに俺は向かった。

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