113話 過去と未来
洞窟から出ると自分の強さがハッキリとわかった。魔力感知の能力もMAXになっているおかげて、この世界の強い奴の居場所がわかった。
どんなに強い奴等でも俺とカヨに敵わないだろう。
きっと俺は簡単にバビリニアの3人の勇者を倒すことが出来るだろう。彼女も心配なく、ソビラトからクッキーをくれた少女を取り返すことが出来るだろう。
「お主達がこれほどまでの強さになるとは思わなかった」と愛が言った。
これでも他の国にバレないように力を制御しているのだ。
強くなって俺が抱いた感情は切なさと喜びだった。
強くなるというのは虚しいこと、とそんな悟りを開いたわけじゃない。強くなって虚しくなるのは戦いが好きな人だけだろう。
なぜ俺は強くなって切ない気持ちになっているのか?
強くなったのがカヨとの別れの合図だからだ。
強くなった彼女は、この世界にいるための目的を果たすだろう。
目的を果たせばカヨは日本に帰ってしまう。もう俺とカヨの人生が、俺の時間軸で交差することが無くなる。
俺が異世界に召喚されて、どれほど彼女のことを求めて彷徨っただろうか?
10年かけて家族と決別したのだ。だから日本に帰れることがわかっても帰らなかった。
たまたま、あるいは必然的にカヨが異世界にやって来た。
彼女は俺にとっては手放した過去だった。
手放したくない過去だった。
いつかの大切な宝物だった。
カヨを見るたびに日本に帰りたい、と思ってしまった。
これから俺は過去を失う。
失えば2度と取り戻すこともできないだろう。それが俺を切ない気持ちにさせた。
そして1年前に日本との決別を決意させたミナミを取り戻すのだ。
ミナミとアニーとナナナと愛と一緒に俺は未来を歩んで行くんだろう。あとミイもいる。バランもチェルシーもいる。それが俺の未来だった。
バビリニアから戦争を仕掛けてほしかった。俺達みたいな小国が、バビリニアというスーパースター国家に喧嘩を売れば世界中から反感を買う恐れがあるからだ。
俺は魔王イライアが王都を破壊した時に星のカケラを持って逃げていたバビリニアのスパイのオッサンをバビリニアに帰した。
星のカケラは俺が持っている。
どうなるかわかっていた。
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