第21話 結婚指輪

 オジさん女の子が使う防具をいっぱい持ってんだよ。それじゃあね、これに着替えてもらおうかデへへへへ、と気持ち悪いことを言って、アニーと相性が良さそうな防具を渡した。


 彼女は筋力がないので重たい素材で作られたモノは着れない。

 だからフェニックスの皮で作られたモノを渡しのだ。不死鳥と言われている希少種の魔物である。

 めちゃくちゃ希少な防具なのに、ミナミは恥ずかしがって着てくれなかった。

 2tトラックに轢かれても無傷にするぐらいの防御力はある。

 それ以上にこのフェニックスの防具が特徴的なのは瀕死ギリギリの状態になれば自動回復してくれるのだ。

 死にそうになっても防具が勝手にHPを回復してくれる。

 最強の防具だけど、俺も着れなかった。それには理由がある。



 アニーの着替えが終わるのを馬車の外で待っている間、ナイフの柄をアニーの手のサイズに合うように加工しておく。


 そして彼女は着替えを終わらせたらしく、馬車の扉を開けて真っ赤な顔を出した。


「本当に、本当にこれが防具なんですか?」


「フェニックッスは希少だから布面積は少ないけど、伝説級の防具の1つだよ。露出した肌の部分もフェニックスの魔力で守られているから、そこらの魔物でもアニーに傷を与えることはできないよ」


「……なんの伝説ですか? 恥ずかしいです」

 馬車の扉に隠れてアニーがモジモジしている。


「大丈夫。もうココはダンジョンの中で俺とアニーしかいない」



 ちなみにダンジョンは洞窟である。雨が降って来ていたので洞窟から少し入ったところで馬車は止めていた。

 ダンジョンの入り口は広いけど中は狭かったり、もっと広かったり、本当にココは洞窟の中なの? みたいな異空間に出たりする。


 アニーがモジモジしながら馬車から降りた。


 ……可愛すぎる。そしてエロい。


 どれぐらい布面積が少ないのかと言うと水着である。

 赤いモコモコのフェニックスの防具と真っ白のアニーの肌の相性はバッチリだった。


 魔道具は装備した人のサイズを合わせて伸縮するので、サイズもピッタリである。


 彼女が恥ずかしそうにモジモジして胸を隠していた。

 胸はBカップぐらい。小ぶりの胸も俺は好きである。

 

 オジさんには、その恥じらいがたまらんのよ。


「似合ってるよ」と俺が言う。


「……恥ずかしいです」


「Tシャツいる?」


「ほしいです」


 アイテムボックスから無地の白いTシャツを取り出して渡す。


 彼女はTシャツを着ようとしたけど、俺の目線が気になって後ろを向いた。


 ダメだわ。俺、ロリコンじゃないのにアニーが可愛すぎて見てしまう。


「ごめん。アニーが可愛すぎて見てしまう」と俺は言った。「できるかぎり見ないようにする」


「見てくれないのは、……それはそれで、イヤです」

 とアニーが複雑な女心を言った。


 アニーが大きなTシャツを装備した。

 なぜかエロくなった。


「わかった。バレないようにチラ見はする」


「あの、下は無いですか?」


「無いよ」


 アニーが黙って馬車に戻って行く。


 怒らせてしまった。でもズボンは俺のサイズしか無いのだ。

 

 彼女が白いワンピースを着て、馬車から降りて着た。


「初めからこうしとけばよかったです」


 ちょっと残念である。

 アニーのあの格好を俺は見ていたかった。


「Tシャツは寝る時に着るので、……その時は見てくれてもいいですよ」

 とモジモジしながら彼女が言う。


「ありがとう」

 と俺が言う。

 自分でキモいことはわかっている。でもアニーのあの格好はエロくて可愛いんだもん。


 あと彼女にアクセサリーをプレゼントしなくてはいけなかった。

 俺の魔法でも防御を上げることは可能だけどデメリットがあった。

 結界はその場所限定になるし、防御魔法は時間が経てば消えてしまう。

 防御の付与が付いたアクセサリーは持ち運びが可能だし、時間が経っても消えない。


「これは魔法による攻撃を半減するネックレス」

 赤い宝石の付いたネックレスをアニーの首に付けた。


「君にプレゼントするから、離さず付けておきなさい」


「いいんですか? こんな高級なもの」


「もちろん」と俺が言う。


 まだまだありますぜ。アイテムボックスからアクセサリーを取り出す。


「それとこれは打撃の攻撃を半減させる腕輪」


 緑の宝石が入っている。


「これも離さずに付けておきなさい。君を守るものだ」


「はい」


 まだありますぜ。アイテムボックスから白い宝石がついた指輪を取り出す。


「それとコレは攻撃力を上昇させる指輪」


 俺はアニーの手を取った。


 指がいっぱいあって、どの指に付けていいのかわからなかった。


「どの指がいい?」


「それじゃあ、この指」


「エルフの村でも左の薬指は結婚指輪なの?」


 顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに「……はい」とアニーが呟いた。


 俺たちは結婚の契約を交わすので左の薬指に指輪を付けるのは間違いではないだろう。


 アニーの左の薬指に指輪を付けた。


「この指輪も離さず付けておきなさい」


「はい。……一生、離しません」

 と彼女が言って、胸に薬指が付いた手を抱きしめた。



 それから俺は彼女にベヒモスという魔物の角で作られたナイフを2つ渡した。

 このナイフも希少なモノである。ベヒモス自体が神話級の魔物なので、なかなか手に入らない。攻撃力はそれなりにあるし、ナイフなので重たくない。アニーでも扱えるだろう。持ち手部分はアニーが馬車で着替えている時に俺が削って握りやすくしておいた。




 そして初めての魔物との戦いである。

「魔物のモーションをよく見て」

 と俺は言った。


 彼女は汗だくになりながら1匹のスライムと対峙していた。

 プルンとしたゼリー状のスライムが、体の中に蓄えていた石をアニーに飛ばして来る。

 俺は一切、手を出さなかった。


 アニーが今装備している防具では死ぬことはないだろう。

 時間がかかってもいいから魔物を1人で倒せるという自信をつけさせたかった。


 だいぶ時間がかかったけど、ようやく魔物を一体倒すことができた。

 スライムは蒸発して消えた。後には魔石だけが残った。


 魔石。魔力が宿った石のことである。魔物によって大きさも色も異なる。

 スライムが落としたのは赤色の魔石だった。アニーはそれを拾った。


「街に戻ったら魔石は換金しよう」と俺が言う。

「お金にできるんですか?」とアニーが尋ねた。


「できるよ。魔石は動力源として使われているから、お店で売買されているんだ」

 と俺は答える。


 この世界の家電は魔具である。魔力を使わないと動かない。だけど魔力が無い人間も結構いる。魔石は動力源として重宝されているのだ。


「冒険者の仕事は主に2つある。魔物を倒して魔石を売ること。それとクエストをこなして報酬を手にいれること」

 と俺は言った。


 彼女は俺がいなくなった後も生きていかないといけない。だから生きて行くために必要なことは教える。


「アニーは仕事って、なんですると思う?」

 すごい大雑把な質問をしてしまった。


 だけど彼女は真剣に考える。

「生きるためですか?」

 とアニーが言った。


 う〜ん、と俺はうねる。

 それは正しい。だけど違うのだ。

 生きるためなら誰にも関わらず自給自足をすらばいいのだ。


「生きるためにするって言うのは合っている。だけど仕事の本質じゃない」と俺は言った。


「仕事って言うのは人の役にたつためにするんだよ」と俺は言う。


「みんなが人の役にたつために働いているから社会はなりたっているんだ。俺達が住んでいる家は誰が建てた? 食事は誰が作った? 服は誰が製作した? 人の役にたつために誰かが仕事をしてくれているから俺達は生活ができている」


「はい」と彼女が言った。


「魔石を取って売ることも誰かの役にたっている。クエストを受託じゅたくして達成するのも、誰かの役にはたっている。だから冒険者という職業は成り立つんだ」


 覚えといてねアニー。人の役に立つために仕事はするんだ。

 人の役に立つことを考えれば商売にもなる。

 逆に人を騙して稼ぐのは仕事じゃない。

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