第27話 やっぱり貴方と一緒が……


 「奏真さんどうしてるかな……」


 雫さんと別れて、千年原学院の校門で待つことにしたのはいいが

 待ち人である奏真さんが来る気配がなかった。


 一応、LIMEで連絡は入れておいたけど、気づいてくれただろうか……。

 確認がてらLIMEを見てみると、私が送ったメッセージに既読がついており


 Souma.O

 『すぐ向かうから待っててくれ!』


 と、メッセージが入っていた。

 スマホをカバンの中にしまって、真正面を一心にみていた。

 

 しばらくして、遠くから見覚えのある姿が見えてきた。

 朝、会った時と同じ白のワイシャツに紺のスラックス姿。

 色々と歩いたり、走ったりしたのだろうか、髪が色々な方向に向いていた。


 まだ1日も経っていないのに、すごく長い間会っていないような感覚になり

 彼の姿を見た時、嬉しくてつい……


 「奏真さーん!!」


 思わず彼の名前を大声で呼んだ。

 が、ちょうどよく目の前に大型の車が通り過ぎて私の声がかき消されてしまう。

 なんてタイミングの悪い……。


 奏真さんは校門にたどり着く最後の信号機の前で待っていた。

 私の姿に気づいたのか、こちらに向けて大きく手を振っている。

 返すように私も手を振る。


 反対側の道路がそれなりの大きな道路なのか、信号機が中々切り替わらない。

 私もそうだけど、奏真さんも待ちきれないのか、落ち着かない様子でそわそわしていた。

 

 奏真さんはその後に、キョロキョロと何度か左右をみると、目の前の信号機が赤にも関わらず走り出そうとして横断歩道の中に入って行こうとしていた。


 そのすぐ後にトラックがスピードを上げて通り過ぎて行く


 「奏真さん!!」


 私はすぐに声を上げる。

 トラックが通り過ぎた先には——

 

 ——トラックに驚いたのか横断歩道の後ろで尻餅をついている奏真さんの姿が


 私はホッと息をつきながら胸を撫で下ろす。



 

 

 「もう、心配したんですからね」


 レヴィアの待つ校門前に到着して、真っ先にレヴィアから小言を言われてしまった。

 原因は先ほどの件だろう。


 「わかってるよ、そんな怒ってばかりだとかわいい顔が台無しだぞ」

 

 俺の返事にレヴィアは頬を赤くして俺の顔をじっと見つめていた。

 

 「それはそうと、奏真さん……」

 「うん?」


 レヴィアは和かな表情に戻っていた。


 「この服装……似合ってますか?」

 

 少し俯きながらレヴィアは小声で話す。


 「それ、千年原学院の制服だよな?」

 「はい、今朝届いたんです、それで……奏真さんに早く見せたいなって思って……」


 レヴィアの声はさらに小さくなっていった。

 

 いつもの白を基調としたワンピースとは違い、紺色の制服に胸元には大きな薄オレンジのリボン

 たしか、このリボンは学年で変わってくるとか前に雫が話していたな。


 「レヴィア……」

 「は、はい……!」


 俺が呼ぶとレヴィアは俯いていた顔をあげて目をまん丸に開いて俺の顔をみていた。

 

 「や、やっぱり変です——」

 「——めっちゃくちゃ似合ってる!!」

 「え……!!」


 俺は右手の親指をあげる。

 

 「何て言うか、もう似合ってるとしかいいようがない! 語彙力なんて知ったことか!」


 レヴィアの制服姿をみたら堅苦しい言葉なんか必要なかった。

 っていうかレヴィアは何も着ても可愛い!


 「もう、奏真さんらしいというか……でも」 

 

 レヴィアはふふっと笑う。


 「ありがとうございます、奏真さんに喜んで頂けてよかったです」


 若干照れた表情はそのままに俺にとって最上級の笑顔を見せてお礼の言葉を述べていた。


 「一回でいいから、制服姿の女の子と一緒に登校したり帰ったりしたかったんだよな」

 

 レヴィアの制服姿を見て、昨日買ってきた雑誌のグラビアコーナーに載っていた写真を思い出す。


 「……もしかして、奏真さんの机の上に置いてあった雑誌のアイドルのようにですか?」

 「え……何でレヴィアが知ってるんだ?」

 「掃除してる時に見かけたんです」

 「もしかして、全部見たりは……?」

 「写真のみですよ……?」


 それを聞いてちょっと安心した。

 色々と表現されているマンガがあるので、レヴィアに見られたら何を言われるか……


 「それじゃ、一緒に帰りませんか……?」

 

 レヴィアの言葉に俺は一瞬、脳の活動が止まる。

 だが、レヴィアの言葉の意味が理解できるとものすごい勢いで脳みそが回転を始め出した。


 「帰る! 帰ろうぜ! いやっほーい!!!」


 俺はガッツポーズを決めながら答える。


 恭一と雫には後でLIMEを送っておくか……





 「無事に会えたみたいだなー」

 僕と雫は遠くから千年原学院の校門に立っている奏真とレヴィアさんの姿を見ていた。

 しばらくは話をしていたみたいだけど、2人で駅の方に向かって歩き出して行った。


 「そうだね、この分だとこっちには戻ってこないかもね」


 さっきから奏真はガッツポーズをしたり万歳したりと行動が忙しない。

 律儀な奏真のことだから後でLIMEで連絡をくれるだろう。


 「そっかー。 それじゃ今からは……」


 雫は横から抱きつき、子猫のように顔を僕の体に擦り付けていた。


 「キョウくんとラブラブだー」


 顔を上げた雫はニコニコとした表情で僕を見る。

 それに答えるように雫の頭を撫でていた。


 「そうだね、メンテ終了の時間が公開されてたから、今日は夜通しかもね」

 「ふっふっふー! キョウくん、私が満足するまで今日は寝かせないからなー」


 雫は不敵な笑みを浮かべていた。

 

 「あ、帰りにコンビニでお菓子を買い込まないとー」

 「ご飯、ちゃんと食べてからね……」


 僕は雫の手を取り、家の方向へと向かって行った。




 「にしても、今日は災難だったな……」

 「そうですか?」

 「レヴィアは楽しかったのか?」

 「そうですね、雫さんにいろんなお店教えてもらいましたし、こんなに長くお話しするのも初めてだったので楽しかったです」


 俺の横を歩くレヴィアの表情をみると本心のようだ。

 終始笑みがこぼれていた。


 「そういう奏真さんはどうだったんですか? 恭一さんと……」

 「そうだな……恭一と2人で遊ぶのは久々だったしな」


 楽しかったことに違いはない。

 でもやっぱり……。 そう思って俺はレヴィアの方を見る。


 「……どうしました?」

 「やっぱりレヴィアと一緒にいる方が一番楽しいな!」


 俺は先ほどと同じように右手の親指を立てて答える。

 レヴィアは驚くが、すぐにいつもの和かな表情に戻すと


 「私もですよ、奏真さん……!」


 毎度のように顔を赤らめながら答えるレヴィアだった。

 新鮮な制服姿だったためか、いつもよりも笑顔が眩しく見えたのは言うまでもない。


 ==================================


【あとがき】


お読みいただき誠にありがとうございます。


次回は10/15(土)追加予定です。


■作者の独り言

食欲の秋到来です……!(健康診断結果? なにそれ美味しいの?)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

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