第13話 修羅場モード突入


 「へぇ……ここがお兄ちゃんのお部屋なんだ」


 桃乃は俺の部屋に入ると、目を輝かせながら部屋の周りを見ていた。


 「奏真さん、お知り合いですか?」


 隣で一部始終見ていたレヴィアが話しかけてきた。

 ……ものすごく不機嫌な表情で。


 「あ、あぁ……こいつは十六原桃乃って言って、俺が中学まで世話になっていた家の子だよ」

 「あれ……奏真さんのご実家は?」

 「昔はあったけどな、今は海外に実家と呼べる家があるみたいだけどな」 


 両親は俺が小学校になると同時に海外へ赴任になった。

 俺を連れて行こうと思っていたが、その時に小学校の手続きなどが終わっていたため、親父の古い付き合いである十六原家に預けられていた。


 「それじゃ、ご両親とはほとんど会っていないんですか?」

 「一応、PCの会議用ツールで顔は合わせてるけどな」 

 

 仕事が忙しいのか、あちらの生活が基本になってしまっているのか、日本にはくることはほとんどないけど。


 「ねぇねぇ、お兄ちゃん?」


 モモこと桃乃が顔を上げて俺の顔を見ていた。

 ……できれば俺の体から離れてくれない?


 「この前、ワンコとウサがLIMEで共有してた人?」

 

 モモはレヴィアのことを指差しながら話していた。

 それを見たレヴィアは少しムッとした顔をしていた。


 ちなみにワンコとウサというのはこの前ショッピングモールであった後輩2人のことである。たしか犬飼と宇佐美だったはず。


 「何だそれ?」


 俺が不思議そうな顔をしているとモモはスマホを取り出して素早い動きで操作をしていた。すぐに画面を俺に見せる。


 画面には『大神先輩に同年代の彼女さん!?』『しかもメチャ美人』といった内容のLIMEの画面。

 日付を見たら、レヴィアとショッピングモールに行った日だった。


 「で、どうなの!?」

 

 モモはスマホをしまうとグイッと顔を俺に近づける

 ただ悲しいことに爪先立ちしても全く近づけていなかった。


 「どうって?」

 「この人と付き合ってるのかってこと!」

 「付き合ってるぞ」

 「即答!? そこは少し戸惑いをだすとかあってもいいでしょ!」

 「いやだって事実だし」

   

 俺は何の迷いもなく即答する。

 横でレヴィアが勝ち誇った様な顔をしていたような気がする。


 「だって、お兄ちゃんはわたしと付き合ってたんじゃないの!?」


 モモは目に涙を浮かべてながら叫んでいた。

 

 「いつどこでそんなこと言ったんだよ!」

 「お姉ちゃんにフラれた時……」

 「だあああああああああ!!!!」 


 俺はモモの一言で昔のことがフラッシュバックして頭を抱える。

 

 「嫌なことを思い出させるな! やっと忘れてきたところなのに!」

 

 俺は盛大なため息をつく。


 「あの時のお兄ちゃんものすごくヘコんでたから、慰めてあげようと思って付き合おうかって言ったらOKって言ってくれたじゃん!」

 「ヘコんでたのは事実だけど、OKとは言ってねーよ!」


 たしかにあの時は気分が沈みまくって部屋に籠っていた。

 その時にモモが来て、色々と言っていたのは覚えているが

 OKと言った覚えは断じてない。


 その一部始終を見ていたレヴィアは俺の腕に自分の腕を絡めてきた。

 なんかすごい圧を感じるけど気のせいだろうか……?

 

 「桃乃さん、過去に何があったのかはわかりませんが——」

 

 俺は思わず息を飲む。


 「奏真さんの彼女は私ですから!」

 

 輝く様な笑顔を振りまきながら答えるレヴィア。

 何だろうな、笑顔の奥に別の感情があるようにも見えた気がするけど、黙っておこう。


 「な……っ!」


 レヴィアの言葉にモモは言葉を失い、ワナワナと震えていた。


 「わ、わたしとお兄ちゃんは一緒にお風呂入ったことある仲なんだから!」

  

 桃乃はレヴィアの勢いに負けじと言い返す。


 「いつの話をしているんだ……」

 

 俺は呆れた声で口にしていた。

 ちなみにモモが言っていたのはお互い小学校低学年の頃だ。


 「わ、私だって奏真さんにむ、胸をさわられ……」

 

 レヴィアもモモに負けじと対抗するが、途中で顔が真っ赤になっていた。

 いや、あれは不可抗力だしってか俺も恥ずかしくなるからやめてくれないか!?


 「わたし、お兄ちゃんと旅行もしたことあるんだから!」

 

 うん、十六原家の家族と全員でな。


 「私だって奏真さん2人きりでお出かけしましたし!」


 ってか今日のことだな、正確には恭一と雫も一緒だけど。


 「わたしは——」

 「私だって——」


 それからというものレヴィアとモモは対抗戦を続けていた。

 段々と俺の方にダメージを負いそうなことが出てきていた。

 やめさせないと先に俺の方が死ぬ。


 「そういや、モモは何でここにきたんだ?」

 

 咄嗟に思いついたことを桃乃に問いかける。


 「あ、そうだ!」


 レヴィアといがみ合いを続けていたいたが急に何かを思い出したかのように手をポンと叩くモモ


 「明日、お姉ちゃんが帰ってくるからパパとママがお兄ちゃんも呼んで食事でもしないかって、言われてたの忘れてた」

 「いや、それならLIMEで連絡すればよくないか?」

 「お兄ちゃんに会いたい気持ちが強かったの!」 

 「……そっすか」


 これ以上話しをしていたら疲れる気がした。ただでさえ長時間の運転で結構疲れてるというのに……。


 「ってかおまえどうするんだ? さすがにこんな時間に歩いてたら補導されるだろ」

 「もちろん、お兄ちゃんの家に泊まるに決まってるじゃん!」

 

 モモの言葉にレヴィアは怒りが顔に出ていた。


 「ダメです! そんなことは私が許しません!」

 「いーだ! あんたなんかに言われる筋合いないもーん」


 2人による第二ラウンドが始まってしまった。


 俺はスマホを持って仕方なく、外にでることにした。




 「もしもし、夜遅くにすみません奏真です」

 『あら奏真くん、元気だった?』


 電話をかけた先は十六原家

 でたのはモモの母親のあけびさんだった。

 通話越しに、英語の音声が聞こえているから好きな海外ドラマでもみていたのだろう。


 常識的に考えて電話をかけていい時間ではなかったが、モモのことで電話をせざるを得ない状況だった。

 モモが俺の部屋に来ていることを話す。 


 『もう、モモったらてっきり奏真くんに許可をもらったと言ってから信じたのに』

 「ですよね、時間が時間なので、今日は俺の部屋に泊めて明日家にいきますね」

 『わかったわ、奏真くんなら安心ね。 そういえばモモから明日のこと聞いてたりする?』

 「さっき聞きましたよ、杏子も帰ってくるんですよね?」

 「そうそう、だからみんなでご飯でもどうかなと思って」


 本音を言ってしまえば、断りたいところだが……

 杏子のこともあるが一番は


 レヴィアと過ごしたいし!


 「是非!」


 と、言うことしかできなかった。

 小学校から世話になった家の人の誘いを無碍に断ることなんて俺にはできなかった

 

 通話を終了して、家のドアを開ける前に大きくため息をついていた。

 

 「杏子のやつも帰ってくるのか……」


 

 そう思いながら俺はドアを開けて中に入る


 「そんな小さな胸でお兄ちゃんを満足させられないでしょ!」

 「そういうあなたも大きとは言えないですけど!?」

 「わたしはこれから成長するの!!」


 リビングではレヴィアと桃乃のバトルが続いていた。


 まさか、この状況明日まで続かないよな!?


==================================


【あとがき】


お読みいただき誠にありがとうございます。

明日もお楽しみに!


■作者の独り言

レヴィアvs桃乃のバトルが意外と書いてて面白い(笑)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

読者の皆様に作者から大切なお願いです。


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