第11話 レヴィア先生と2人きりのレッスン



 「奏真さん、早く来てください!」

 「ほら、ちゃんと準備運動しないとな……!」

 

 俺はラジオ体操のリズムを口ずさみながら体全体をほぐしていく。


 「……さっきから同じこと言ってますよ! いつまでラジオ体操やるんですか!」

 「と、とりあえず第三まで?」

 「第二までやれば充分です!」


 レヴィアが俺の腕を掴むと海への方へと俺を引っ張っていく。


 「ちょっとまって、こ、心の準備がまだ——」

 

 もちろんレヴィアの耳に入るわけなく、俺の体はそのまま海の中へ入って行った。





 「レヴィア……もう戻っていいよな?」

 「まだ5分も経ってないですよ!?」

 

 足が海水に触れてから体が徐々に震えだし、体が首の下あたりまで浸かった時からは恐怖そのものだった。風呂は平気だって言うのに……。


 その反面、レヴィアはとても楽しそうな表情をしている。


 「まずは慣れるところから始めた方がよさそうですね」

 「って……いいますと?」

 「まずは潜ってみましょうか!」 


 そう告げたレヴィアは大きく息を吸い込んで勢いよく真下の海の中へと潜って行く。

 

 「ちょ、レヴィア!?」


 慌てて声をかけるとすぐに戻ってきた。


 「ゆっくりでいいですから、やってみましょう!」


 レヴィアは再び海の中へと潜って行く。

 海の中をみるとレヴィアの姿がゆらゆらと揺れていた。


 「奏真さん!」

 

 その光景を見ていると目の前に海面からレヴィアが姿を表す。

 あまりの近さに俺はドキッとしてしまう


 「いやいや、無理だって怖いものは怖いんだってば!」


 俺の言葉にレヴィアは唸り声をあげていた。だが、すぐに名案がでたのか

 明るい表情に戻っていく。


 「それじゃ、一緒に潜ってみましょうか!」


 レヴィアは俺の肩に手を乗せると、ゆっくりと力を下へとかけていく。


 「ちょ……まったまった! 心と体の準備が——!」


 そう言っていく間にも海水が俺の唇に触れる。


 「私が一緒ですから、大丈夫ですよ……」


 レヴィアの声が聞こえると同時に俺の全身が海へと浸かっていった……。



 


 目の前が真っ暗だった。

 俺どうしたんだっけ?

 

 「そ………………ん」


 誰かが呼ぶ声がする……


 「そ……さ……ん」


 よく耳にする声、聞いていると落ち着いてくるような……


 「そ……う……ま……さん!」


 

 「ふぁ!?」


 名前を呼ばれると同時に一気に視界が晴れていった。

 周りにはゴツゴツとした岩だったり、ゆらゆらと揺れている草

 っていうか、視界が揺れているような……


 そして目の前にはレヴィアの姿があった。

 彼女はニコッと笑顔で俺の顔をみている。


 そこで俺は海の中にいることに気づき、慌てて顔を出した。

 

 「はぁはぁ……!!!」

 

 全速力で走ったかと思えるぐらい息切れを起こしていて、心臓がものすごくバコバコと音を立てていた。

 

 呼吸を整えていると目の前でレヴィアが顔を出した。


 「奏真さんよくできましたね、えらいえらい」 


 

 レヴィアは褒めの言葉と一緒に俺の頭を撫でる。

 いや、子供じゃないんだから……

 そう思いながらも悪くはないと思える自分がいた。

 


 そして、何度か潜ることをやっているうちに先ほどまであって恐怖感が少しずつなくなっていた。

 初めの何回かは海の中で目を瞑っていたが、いつの間にか目を開けて周りの風景をみる余裕まで出てきた。

 レヴィアの教育の賜物といえよう。


 何度目か忘れたが、俺はまた海の中に潜っていた。

 で、目の前にはレヴィアのお腹あたりが映っている。

 

 余裕ができたのか、俺の中でちょっとしたイタズラ心が芽生えていた。

 レヴィアのお腹を掴むためにゆっくり動いて近づこうとするが……


 いつの間にか、俺の目の前には目を細めて俺を睨むレヴィアの顔があった。

 慌てて顔を出すと、レヴィアも顔を上げる。


 「奏真さん、いまいかがわしいことしようとしましたね!」

 「そ、そんなことするわけないだろ……!」

 「じゃあなんて手が何かを掴もうとする仕草をしていたんですか?」


 レヴィアは問い詰めてくる。

 顔はすごい笑顔なんだけどさ、声のトーンと合っていない

 何も答えることができなくなった俺をみてレヴィアはため息を漏らす


 「奏真さんのことだから慣れてきたら絶対にやるだろうと警戒してよかった」 


 そう話すのはいいが、俺ってそこまで信用ないのか!?



 「潜るのは充分ですので、次は泳ぐ練習にいきますよ!」


 レヴィアは俺の両手を掴む。

 

 「私が奏真さんの腕を掴んでいますので、まずは足をバタバタとさせて、沈まないようにしてくださいね」

 

 「せーのっ」という声と同時にレヴィアはすぐに俺の腕を引っ張る。

 急なことだったので前のめりになってしまい体全体でバランスを取ろうとするが……


 「ひゃっ……」


 


 ネットかテレビか忘れたが、バランスを崩した人間は倒れないようにするため、

何かを掴もうとしたり、しがみつく習性があるとかないとか。


 何でこんなことを話しているのかというと、俺が今そのそんな状態だからだ。


 「そ、奏真さん……!」


 名前を呼ばれて、顔を上げるとレヴィアの顔が見えた。

 どうやら、俺はレヴィアの体を掴んで倒れずに済んだようだ。


 「いやあ悪い悪い……でもレヴィアのおかげで助かったよ」

 「いえ、急に腕をひっぱった私が悪かったんです……」


 互いに謝り合う。

 にしてもレヴィアの様子がいつもと違う感じがした。

 何か俺と目を合わせないし、顔を赤くなっているような……


 「あ、あの……奏真さん?」 

 「どうした?」 

 「……そろそろ、手を離してほしいです」 


 レヴィアはか細い声で話していた。

 

 「手……?」  


 そう言えばさっきから手から何かふにふにとした感触がする……

 目線を自分の手元に向ける。


 俺の手はレヴィアの首の下——

 決して大きいとも小さいともいえない俺の掌に収まるほどよいサイズの

 レヴィアの胸をガッチリと掴んでいた。


 「だあああああああああ!!!!」 






 「はいよ、コーラとジャスミン茶!」


 売店のおじさんから注文したものを受け取ると、受け皿にお金を置いて店を後にした。


 休憩のため一度海岸に戻ったのはいいけど、奏真さんはずっと謝りっぱなしだった。

 次第には土下座まで始めたので、居た堪れなくなって飲み物を買いに行くと言ってその場を離れた。

 

 「いつもなら喜ぶところなのに」 


 そのほうが奏真さんらしいし……

 触れたのが他の人じゃなくて奏真さんでよかったとも思っている。


 自分の胸元を見る。

 ……着替える時にみた雫さんのが印象が強すぎたせいかいつも以上に小さく見える。

 

 やっぱり大きい方が奏真さんは喜ぶのかな……


 私は小さくため息をついてしまう


 「帰ったら調べてみようかな……大きくする方法」


 小さな声で呟きながら彼の待つ海岸へ帰ろうとする。


 「お、そこのキミ、1人? よかったら俺たちと一緒に遊ばない?」


 目の前に茶髪と金髪の男の人が私の前に立ちふさがっていた。


 

 ==================================


【あとがき】


お読みいただき誠にありがとうございます。


少し短めですが、今日はここまでになります

明日もお楽しみに!


■作者の独り言

最後に海で泳いだのって何年前だろう……(白目)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

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