第10話 彼女が欲しいもの


 「レヴィアの肌ってすごくきれいだなー」


 女性用の更衣室に入り、ロッカーの中に荷物をいれていると、隣にいる雫さんが私のことをじっとみていた。

 

 「そ、そんなことないですよ……雫さんのほうが綺麗ですよ」


 嬉しくもあり恥ずかしくもあって、遠慮がちな返答をしてしまう。

 よく言われることだけど、言われるたびにどう反応していいかわからないのが本音かな。


 「そうかなー。 キョウくんはいつも褒めてくれるけどなー」

 「雫さんは可愛らしいですからね」

 

 背の高さのあってか雫さんは小動物的な可愛さがあるので思わず頭を撫でてしまいたくなる。 


 「な、なんだよー」

 

 実際に頭を撫でてしまっていた。

 目の前で恥ずかしいのか雫さんが顔を赤くしながら腕をぶんぶんとまわしている。

 

 「は、はやく着替えて2人のところにもどるぞー!」


 雫さんは小動物のように頬を膨らませてながら私の顔をみている。

 ……うん、すごいかわいい。


 「そうですね、早くしないと2人に怒られちゃいますね」


 私はふふっと笑いながら、水着を取り出して服を脱いでいく。

 雫さんも着替えるために大きめのパーカーのファスナーを下げていく。 


 「えっ……!?」

 

 パーカーの下にある彼女の姿を見て、私は思わず変な声が出てしまっていた。


 

 


 「2人とも遅いな……」

 「女性は何かと時間がかかるからね」

 

 レヴィアと雫が更衣室に行ってから30分近く経つ。

 俺と恭一は女性用とは真反対にある男性用の更衣室で5分もしないうちに海パンに着替えて戻っていた。

 

 「もしかして、2人とも……!」

 「どうかしたの?」

 「お互いの体を触り合いしているのかもしれない!」


 見た目無邪気な雫が興味本心でレヴィアの体を触りまくり……

 顔を赤くして恥ずかしがるレヴィア。

 レヴィアも雫の小さな体躯が気になり、お返しと言わんばかりに触れていく……


 考えただけで色々と熱くなりそうな展開が俺の脳内で繰り広げられていた。


 「……奏真、想像と妄想するのはいいけど、顔と動きに出すのはやめようね」


 恭一はため息混じりに話していた。

 

 「ちくしょう、雫のやつ許さねー!」

 「……勝手に想像して人の彼女に怒りの矛先を向けるのはどうなんだろうね」


 やば、恭一のやつ顔はニコニコとしているが声のトーンと合っていない。

 これ以上やると、マジで怒られる。

 雫のことになるとコイツは普通じゃいられないからな……


 そんなやりとりをしていると遠くからレヴィアが走ってる姿をみつけた。

 薄いピンクのフリルのついた水着姿はこの前見たものと同じ。


 「そーまさぁぁぁぁぁぁん!!!」


 俺の元にくるなりレヴィアは俺の体に抱きつき、俺のお腹の辺りに顔を埋めていた。

 いやさ、嬉しいんだけどさ……!

 身長的に彼女の胸元があまりよろしくないところにくっついているんだけど!?


 「ど、どうした……!」

 

 俺は冷静を装いつつ、レヴィアの肩を掴んで体を引き離した。

 ここじゃなかれば引き離さずにすんだにと内心悔やんでいるが……


 「雫さんに……!」


 顔を上げたレヴィアは今にも泣きそうな表情をしていた。

 走ってきたのもあって少し息も荒い。

 ……いや、全然グッとくるなんて持ってないからな!


 「雫がどうかしたの?!」


 すぐに反応したのは恭一だった。

 先ほどまで呆れた表情をしていたが、雫の名前を聞くとすぐに真剣な顔つきになった。


 「……胸が!」 

 「え……?」


 「雫さんに胸があったんです!! しかも大きめの!」


 レヴィアの叫びを聞いて俺と恭一は言葉を失っていた。


 「……レヴィア、もしかしてそれに驚いて走ってきたのか?」

 「そうです!」


 レヴィアの表情は真剣そのもの。

 彼女からしたら衝撃的なことだったんだろう。

 

 「……私、変なこと言っていますか?」


 俺や恭一が驚かないことをみたレヴィアは今にも震えそうな顔をしていた。

 変なことは言っていないのは事実。レヴィアの気持ちもわからなくもないが

 それをどうやって言葉にしていいかわからなかった。

 おそらく、先ほどから何も口にしていない恭一も。


 「もどってきたぞー」 


 俺と恭一が返答に悩んでいると、いつもの感じで雫が戻ってきた。

 更衣室に行く前と同じ大きめのパーカーを着ていたが、先ほど履いていたズボンが見えないので

 パーカーの下に水着を着ているのだろう。


 「……なあ雫、予想はつくけど更衣室で何があったんだ?」

 「私の胸を見てショックを受けてたー」

 「……だろうな」

 「……それしかないよね」


 俺と恭一は同じタイミングで答えていた。

 

 「しょうがないじゃないですか! 雫さんの体つきからして、どうみても……」 

 「あぁ、わかるよ……」

 

 レヴィアは今にも泣きそうな顔をしていた。

 誰もが思うことだが、初めて雫を見た人はどう見ても幼児体型にしかみえない。

 ……ってか俺もそう思っていた。

 

 俺の部屋で遊んでいる時に足をつまづいて俺に飛び込んでくるまでは——


 「そう言われるのが嫌だから、大きいパーカーを着ているんだよー」

 「羨ましいです……!」

 「大きいから得したことなんかないぞー! 無駄に肩がこるし! 男どもはジロジロ見てくるし! こんなのあげれるならタダであげてもいいぐらいだー!」

 「ほ、ほしいです!!!」


 レヴィアは雫の胸元に手を伸ばしながら叫んでいた。

 その横で俺はレヴィアにあの大きさがあればと邪な考えが頭の中を駆け巡っていた。




 「それじゃ、僕たちはあっちにいくから、夕方ごろに集合しよう」


 レヴィアと雫のやりとりが終わり、レヴィアが落ち着いたのを見て

 恭一は雫を連れて、当初の目的であるネットゲーのイベント会場へ向かって行った。


 「それじゃ、私たちも行きましょうか!」


 レヴィアは俺に手を差し伸べる。

 先ほどの特異な行動などなかったと言わんばかりに……。


 「……よし、行くか!」


 俺は笑いそうになりながらも彼女の手を掴んだ。

 これから海水の中に入っていくことへの恐怖感と彼女と一緒に遊ぶことへの高揚感に挟まれながら……


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【あとがき】


お読みいただき誠にありがとうございます。


少し短めですが、今日はここまでになります

明日もお楽しみに!


■作者の独り言

ギャップって大好きなんです(真剣)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

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