第9話 アオハルスタート
(奏真さんの背中と私の体が……! ドキドキしてるの聞こえてないよね??)
奏真さんの指示に従って、彼の背中にわずかな隙間も出さないぐらい自分の体を寄せていた。
むしろしがみ付いているといった方が正しいかもしれない。
触れ合ってからと言うもの、私の心臓がものすごい音を立てて振動していた。私以外にも聞こえているんじゃないかってぐらい。
奏真さんはどうなんだろう……
ヘルメットをしているから顔はみれないけど、私と同じ気持ちならとても嬉しい。
奏真さんのことだから私の体に密着できる理由ができたことで嬉しいを通り越して如何わしいこと考えて、顔がニヤけていそうだ。
その方が奏真さんらしくていいのかも。
下手に何もない振りをされるよりも、裏表がなくてわかりやすい方がいいに決まってる。
……ってまた、心臓の鼓動が早くなってきたし、顔まで熱くなってきた
余計なことを考えないで、他のことをしよう! うん!それがいい!
と、言っても彼の背中にしがみ付いている状態でできることと言ったら周りを見ることか運転手である奏真さんに話しかけるぐらいしかできない。
奏真さんと話をしようかと思ったけど、今の状態ではうまく話せる自信がなかったので、周りの風景を見ていることにした。
今走っているのは、古いお店が立ち並ぶ商店街の中だった。
どうやら目的地の海岸に近い場所なのか、水着姿でサーフボードを持った人や、親子連れ、カップルなど様々な人たちが歩いていた。
そういえば、潮風の匂いがしているような気もする……
「レヴィア!」
「ひゃ、ひゃい!」
突然耳元に奏真さんの声が聞こえ、思わず変な声を上げてしまっていた。
「なんだよ、その返事は?」
「奏真さんが驚かすからです!」
「……普通に声かけただけなのに」
「そ、それよりもどうしたんですか……!」
「前見てみな?」
奏真さんは人差し指で前を指していた。
横から顔を出してみた先の光景を見て私は思わず息をのんだ
正面には一面の海が広がっていた。
上空から照らす太陽の光で海面がキラキラと輝いている。
「奏真さん、海です!」
嬉しさのあまり大声をあげてしまっていた。
「もう少しで着くから、もうちょい待っててくれ!」
「はい!」
私の心臓は先ほどとは違うドキドキ感で激しく鼓動していた。
「見てください、海ですよ!」
「わかってるよ」
バイクを駐輪場に停め、待ち合わせの海の家に行く途中でレヴィアは足を止めて海を見て、大はしゃぎをする。
「早く泳ぎたいです!」
「まずは恭一達と合流してからな」
「はーい!」
うん、いい返事だ。
それにしても海を目の前にしてこんなにテンションがあがるとは
逆に俺なんか、若干足が震えているっていうのにな……
海岸につながる階段を降りると砂浜が広がっており、その近くではこちらに押し寄せる小さな波が砂を濡らしていた。
「おーい奏真、こっちこっちー」
しばらく歩くと、待ち合わせ場所の海の家に到着した。
駐輪場でバイクを止めた直後にスマホを見たら着いたと連絡がきてたので、2人を探していたら声をかけられる。
声がした方をみると奥で恭一と雫が手を振っていた。
「お待たせ、待ったか?」
「いや、僕らもさっきついたところだよ、何か頼むかい?」
俺とレヴィアが腰掛けると恭一がメニューを渡してきた。
「そういや、朝から何も食べてなかったな……」
「ちゃんと朝ごはん食べないと、体によくないですよ。 それにこれから泳ぐんですからしっかり食べて体力をつけないと!」
「わかったよ、それじゃこの大型フィッシュバーガーで」
メニューの中で一番目立っていたから選んだけど食べきれるかコレ
「どれにしよう……」
レヴィアはメニューを開くと、中をじっくりと見ていた。
「レヴィア、これ美味しいぞー」
レヴィアの対面に座る雫がメニューのニョキっと上から顔をだし、メニューにある食べ物を指していた。
……大きめのパーカーを着ているため差しているのは指ではなく袖の部分。
「塩キャラメルアイスパフェ……」
「うん、さっき食べたけどすごく美味しかったー」
雫は満面な笑顔で答える。
そう言えば雫のところにメニューと同じグラスが置いてあった。
「朝から偏りすぎてるものを食べれるのは雫だけだよ」
恭一は若干呆れながら話していた。
雫はいつも一緒にいる恭一でも呆れるほどの偏食なのである。
前に俺の部屋に来た時に朝から牛丼を食べていたのを見て、軽く食欲が失せたことを思い出した。
「……奏真さん」
メニューを覗き込む様にみているレヴィアが震えた声で俺を呼ぶ
「どうした? ってかまだ決まってなかっ——」
「——塩キャラメルアイスパフェにします!」
「……マジ?」
「仕方ないじゃないですか! 女の子は甘いものに弱い生き物なんですから!」
今にも泣きそうな声を出すレヴィア。
その目の前では雫がガッツポーズをとっていたことを俺は見逃さなかった。
「「ごちそうさまでした」」
俺とレヴィアはそれぞれを注文した食べ物を完食して手を合わせる。
「すごい食べっぷりだね……特に奏真は」
「おかげでちょっと苦しいけどな」
俺が注文した大型フィッシュバーガーはその名の通り、ファーストフード店のハンバーガーよりも3個分といった大きさで、想像していたよりも大きくはなかったかなと……。
そして俺の隣では塩キャラメルアイスパフェを完食したレヴィア。
「ほどよい塩気と甘味が絶妙で美味しかったです……」
レヴィアはうっとりとした表情で中身のなくなったパフェグラスを見ていた。
「それじゃ着替えてきます!」
「キョウくん行ってくるー、奏真絶対に覗くなよー」
「……何で俺だけなんだよ!?」
「顔からしてスケベそうだしな」
いやいや、至極真っ当な顔だろ!?
「レヴィア、いくぞー!」
「はい! いきましょう!」
レヴィアと雫はそのまま海の家の中にある更衣室の中に入っていった。
「……ガン無視していきやがった」
俺がため息をつくと、目の前の恭一が笑っていた。
「あんなこと、奏真のことは気に入ってるみたいだよ」
「そうなのか?」
「僕以外の男で話すのは奏真しかいないよ」
「ギャルゲーならそれフラグなんだけど……雫はなあ」
何かと話す様になってから、いいやつだなと思う様になってきたけど
それはあくまで友人として。
それを話すと恭一は笑っていた。
「と、いうか今はレヴィアさんだけしか興味がないでしょ?」
「もちろん!」
「今日もどうせ、彼女の水着姿がみれるぜ!っていう下心だけで来たようなもんだろ?」
恭一は含みのある笑いをしながら俺の顔を見ていた。
このまま言われっぱなしなのも癪だな
「そういうお前だってどうなんだよ? あー見えて雫は——」
「——残念、僕は奏真と違ってそういう気持ちは持ち合わせてないんでね」
聖人君主なのかこいつ、そんなことあるわけないだろ……
「そう言えば、レヴィアさんの水着を見るのは今日が初めて?」
「いや、この前……」
続きを言おうとしたが、やめておいた。
レヴィアの水着姿をみてのぼせて倒れたなんて恥ずかしくて言える気がしなかった。
「いやあ、早く帰ってこないなかなー!」
とりあえず誤魔化すことにした。
自分でも呆れるくらい下手な誤魔化し方だが……
「そうだね、奏真がどう反応するか楽しみだよ」
恭一は今日の天気以上のスマイルで俺の顔を見ていた。
何だろ、すごい悔しいんだが……。
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【あとがき】
お読みいただき誠にありがとうございます。
少し短めですが、今日はここまでになります
明日もお楽しみに!
■作者の独り言
夏ですね〜(リアルは秋になろうとしてるけど……)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
読者の皆様に作者から大切なお願いです。
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