第6話 お出かけしたいです!

 「奏真の友人の如月恭一きさらぎきょういちです」

 「同じく黒野雫くろのしずくだ」


 リビングで2人を座らせて、雫の要望のお菓子と冷蔵庫の中にあった飲み物を渡す。


 そして、唐突な自己紹介が始まった。

 俺の隣に座っているレヴィアは突然のことで、どういうことなのか理解できずに俺の方を見ていた。


 「あー……大丈夫、見た目と言動が一致してないけど、俺の友人であることは間違いないから」

 「なんかものすごい突っかかる言い方だ」


 斜め前の席に座る雫が文句を言う。


 「まあまあ、奏真なりの照れ隠しだと思うから、ここは大目にみてあげなよ」


 雫の隣に座る恭一が自分の彼女を宥めるが、顔はニヤついていた。

 

 「はじめまして、月城レヴィアです」


 レヴィアはお辞儀をしながら自己紹介をする。


 「お二人は奏真さんの……お友達ですか?」


 顔をあげたレヴィアは俺の方を見る。

 

 「恭一は高校入ったからの付き合いだよ、雫は恭一と付き合ってからだから去年の終わりか?」

 「雫と付き合ったのは去年の夏で、奏真に紹介したのはそれぐらいだったね」

 「あー懐かしいなー! クソ寒い時に呼び出されて、おまえの部屋で雫とイチャついてるのを見せつけられた時のこと」

 「いつまで言っているんだ、ここまできたら単なる僻みにしか聞こえないぞ」

 

 雫が呆れた顔で話す。

 ってかイチャついてたことは否定しないのかよ……。


 「僕たちの話は置いといて、そろそろ聞かせてほしいんだけどさ」

 

 恭一が話を切り出すと、雫と一緒に俺たちの方へ身を乗り出していた。


 「「2人の出会いと馴れ初めを!」」 


 ——声の息もピッタリだった。



 さっきから2人の顔がニヤついているからそれを聞きたがっているのは一目瞭然だ。

 そりゃ俺だって真っ先にコイツらに惚気話をしたいさ!


 でもどうやって話そうか、ずっと悩んでいた。

 

 レヴィアはダウンロードしたフリーゲームのキャラクターで、

ゲームを進めていくうちに付き合うことになったのは事実だが。

 

 で、問題なのはそれをどうやって話そうかというところだが…… 


 「おーい、もったいぶるなー! おしえろー!」


 雫の声で我に返る。

 さて、今はどうやって答えるか……


 「夏休みの初日に彼女が隣に引っ越してきて、挨拶に来た時にさ、一目惚れしちゃって、いきなり告っちゃったんだよ!」

 「……い、いきなり告白!?」

 

 俺の話に真っ先に驚いたのは雫と隣に座るレヴィアだった


 「そ、そうなのか!?」

 

 雫の視線は俺ではなくレヴィアの方へ。

 大声で言われたからかレヴィアは体をビクッとさせていた


 「は、はい、そうです……!」


 戸惑いながらもレヴィアは小さな声で答えていく。

 

 「そ、それに私も奏真さんのことは……」 


 顔を赤くしながらも話を続けるレヴィア

 ……なんかこっちまで顔が熱くなってきたのは気のせいか。


 「へぇ、相思相愛な感じなんだ、よかったね奏真」

 

 俺とレヴィアの話に雫は驚いたままだったが、その隣に座る恭一はそんな様子は一切なく、いつも通りに反応だった。


 「いやいや、何でキョウくんそんなに冷静なんだよ!」

 「奏真の一目惚れ癖は今に始まったことじゃないからね」 


 恭一の言うことは事実。

 高校に入ってからは学校で自分好みの女子生徒を見つけては告白をしていた。まあ、結果に関しては察してくれとしか言いようがないが……。


 「そ、そうなのか……」


 恭一の言葉に雫は徐々に冷静になったのか、段々と声が小さくなっていった。


 何とか2人を納得させる答えが出たのはいいが、思っていた以上にこっちへのダメージ(?)が大きかったようで、俺もレヴィアもしばらく顔を真っ赤にしていた。





 「……あ、そうだ」


 ようやく体の熱が冷めた頃、恭一が何かを思い出したかのように声を上げる。


 「どうしたんだ?」

 「2人の話を聞いてすっかり忘れてたんだけどさ」


 恭一は話しながら自分のスマホを取り出すと、画面を俺に見せてきた。

画面にはゲーム画面が映し出されており、その上には『リアルイベント開催!』とカラフル且つ大きな文字で書かれていた。


 「何これ?」

 「僕と雫がやっているゲームのリアルイベントだよ、ここでしか手に入らない来場者特典もあるんだけど種類が結構あって、協力してほしんだけどさ」

 「あー……そういや前にも同じようなことがあったな」


 たしか以前はコンビニで対象のお菓子を買わなければいけないとかで

 大量にお菓子を渡されたな。一時期、夜食には困らなかったが。


 「で、俺はどうすればいいんだ?」

 「会場に行って特典をもらったらあとは好きにしててもいいぞー」 

 「そうだね、会場もレヴィアさんとのデートにはもってこいの場所だと思うし」

 「場所にもよるけど……」


 俺は恭一のスマホの画面をスライドしていく。会場がどこにあるか調べたかったからだ。

 

 「お、あったあった。場所は……」


 会場の場所をみて俺はその場で動かなくなっていた。


 「奏真さん……?」


 それを見ていたレヴィアが心配そうに俺の顔を見ていた。


 「悪いな恭一。 今回ばかりは協力できそうもないわ」

 「「え!?」」


 目の前の2人は突拍子もない声をあげていた


 「な、何でだよ! さっきまで乗り気だったのに!」 

 「場所が悪すぎるんだよ!」 

 

 俺は恭一の画面に指をさす。

 そこには会場の場所が書かれている。


 ——『阿王海岸』と


 ちなみにここは市外の海岸で、とても綺麗な海だと言われており、夏のデートスポットには欠かすことのできない場所である。また、毎年夏になれば海の家が開かれたり、イベントがあったりと県外からの客も多いようだ。


 「あーそうだ……忘れてたよ」

 

 恭一は残念そうな表情で背もたれに全体重を乗せていた。


 「奏真、泳げないんだった……」

 「……そうだよ」


 子供の頃に親に海に連れてきたもらったことがあるが、泳ぐことができなかった。水の中に入るところか、顔をつけることもできずその時は盛大に泣き出していた。


 両親はその時には大きくなれば大丈夫だろうと思っていたようで

あまり深刻には考えていなかったようだが、結局この年になっても泳ぐことができなかった。


 「さすがに苦手なところに行かせるのは気がひけるし、今回は僕と雫の分で我慢するかな」

 「そうだなー 無理強いはよくないしな」


 恭一と雫が残念そうに肩を落とす。


 「奏真さん……!」 


 隣でレヴィアは一心に恭一のスマホ画面を見ていた。


 「ど、どうした……?」

 「海、行きたいです!」 


 レヴィアは子供のように目を輝かせながら俺の顔を見る。

  

 「……な、何で!?」

 「私、昔から泳ぐのが好きなんです!」

 「そ、そうなんだ……」

 「一緒に泳げば楽しいと思うんです!」


 レヴィアが力強い言葉に圧倒されてしまう。


 「いや、俺泳げないからさすがにそれは無理かな……」  

 

 俺が泳げるなら是非!と言いたいところだけどな……  


 「それなら私が教えてあげますよ!」 

 「え……!?」

 

 レヴィアは自信たっぷりに自分の胸を叩いていた。

 

 「こう見えていろんな人に泳ぎ方を教えてきましたから! 奏真さんも絶対に泳げるようになりますよ!」


 「「おー!」」  


 気がつけば恭一と雫はレヴィアの力説に対して拍手をしていた。


 「だから行きましょう! 海に……!」 


 レヴィアは俺の両手を挟むように掴むと自分達の視線の高さにあげていた。

 何なんだ、この断ることができない雰囲気とか空気は!?


 「……わかったよ、行くよ」


 何とも言えない空気に負けて海に行くことを決意する。

 そのあとすぐに3人が盛大な歓声をあげたことは言うまでもない。



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【あとがき】


お読みいただき誠にありがとうございます。


明日もお楽しみに!


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

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