第5話 招かれざるフレンズ
「さてと、こいつが最後の段ボールだな」
俺は額から大量に流れてくる汗を手で拭いながら目の前の白い段ボールを見る。表紙には『日用雑貨品』と書かれていた。
ちなみにここは俺の部屋ではなく、隣の部屋——
——つまりはレヴィアの部屋である。
昨日の夜に棚だったり、テーブルだったり1人では運べないものが多くあってどうしようか悩んでいたので、心優しい俺が真っ先に手伝うと言ったのだ。
決してレヴィアの部屋に入れるのが嬉しいとか、やましい気持ちは微塵もないからな!
それにしても何だろ、同じ部屋の作りなのになんかいい匂いがするな……。
ちなみに俺がいるのはレヴィアの寝室。
目の前には数時間前まで彼女が寝ていたとされるベッド
そして本人は近くのコンビニへ買い物を行っている。
健全な男子高校生ならこの状況をどうみるだろうか……
ちなみに俺だったらどうするかというと
何もしません。
だって、事前にレヴィアから釘を刺されてるし。
『ベッドで寝たりしたら奏真さんのことを軽蔑します』
と、和かな顔で言われたらできるわけないだろ。
そんなことよりもさっさとこの段ボールをどうにかしないとな
しっかり止められたガムテームを外して段ボールを開ける
その中身は……
「……ま、マジで!?」
中身を見た俺は息を飲むことしかできなかった。
「もどりました。 奏真さん大丈夫ですかー?」
そんな中、レヴィアが買い物から帰ってきた。
「奏真さん……帰っちゃったのかな」
すぐに寝室のドアを開ける。
「いるじゃないですか、返事してくれても——」
レヴィアは途中で言葉を失い、彼女の視線は段ボールの前で固まる俺ではなく段ボールの中身へ。
「いやああああああああああああ!!!!」
段ボールの中で散乱する自分の下着類をみてレヴィアは恐怖に近い感情が混ざった悲鳴を上げたのだった。
「……奏真さん」
「どうしたー?」
「……顔がニヤけています」
あれからすぐにレヴィアの部屋を追い出され、仕方なく自分の部屋に戻った。
すぐにレヴィアも俺の部屋に来たので、リビングで昼ごはんを食べているのはいいが、俺の頭の中から先ほどの段ボールの中身が頭の中から抜けることはなかった。
「今すぐ忘れてください……!」
「努力はする!」
「ニヤけていっても説得力がないですよ!」
レヴィアは顔を真っ赤にして訴えかけるが、こればっかりはどうしようもない。脳裏に焼き付いた映像はなかなか離れることはない。
それを説明するとレヴィアは「うぅ……」と下を向いて唸り声を上げてしまう。
「こういう時はさっき以上に脳裏に焼き付くようなものを見れば置き換わるはず!」
俺が力強く話すとレヴィアは顔を上げる。
……何もかも信用してなさそうなジト目で俺の顔を見る。
「……嫌な予感しかしないですけど、一応聞いておきます」
「それはだな——」
言いかけたところで、テーブルの上に置いてあった俺のスマホが鳴り出した。画面を見ると着信画面で『如月 恭一』と書かれていた。
どうやら電話をかけてきたのは学校の友人だが、どうしたんだ?
「奏真さん、電話ですよ?」
そう言ってレヴィアは俺のスマホを手渡す。
「もしもし?」
『お昼に起きているなんて珍しいね』
スマホのスピーカーから柔らかい声が聞こえてきた。
よく話す恭一の声そのものだ。
「何だよそんなこと確認するのに電話したのか?」
『そうじゃないけどさ、ってかさ……」
「何だよ?」
「今、雫と一緒に玄関の前にいるんだけど、早く出てきてくれないかな」
「はいー!?」
俺は大声を上げると同時にドアホンを起動させる。
画面には緑の無地のTシャツにジーパン姿の爽やかをそのまま形にしたような顔立ちをした恭一と隣で恭一の腕をがっちりと掴んだ大きめのパーカーにハーフパンツ姿の背の低い女が写っていた。
通話終了ボタンをタップしてすぐに玄関に行き、ドアを開けると
先ほどドアホンに写っていた2人がいた。
「やあ、暇だから遊びにきたよ」
「遊びにきたぞ」
恭一はスマイルを振り撒き、その下でこいつの彼女である黒野雫(くろのしずく)は腕がでていない袖をぶらぶらとさせながら無機質な声で声をかけてきた。
「今、立て込んでいるから帰れ」
「もしかして、ギャルゲーでいいところなのかい? 僕らは適当に寛いでるから気を使わなくてもいいよ」
「あ、せめてお菓子と飲み物はほしいかも」
……俺の部屋は休憩場所じゃないんだが?
「ってか何でわざわざ俺の部屋にくるんだよ、2人でイチャついてればいいだろ! ネットゲーでもリアルでも!」
恭一と雫はネットゲー廃人と呼ばれるほど、1日の大半をネットゲームに費やしている。そもそもこの2人は今プレイしているネットゲームを通じて知り合ったのがきっかけで付き合っている。
「たまたま、雫と奏真の話になったから来てみたんだよ、奏真相手なら雫も気を使わないし」
恭一が説明すると隣で雫は両手を腰に手をあててえっへんと言わんばかりの顔をしている。
……見た目も相まってか小学生にしかみえない。実際は同い年だけど。
「とりあえず今日は無理だ!」
ってかこいつらがいつもは2人でいたいのと同じように
俺はレヴィアと2人きりでいたいんだ!
そのためにはこいつらをどうにかして帰させなければならない
普段使わない脳みそをフル回転させながら考えていたが……
「奏真さん? カップラーメン伸びちゃいますよ」
そんな俺の苦悩は俺の後ろから発せられたレヴィアの声によって虚しく終わりを迎えた。
せめて、俺だけに聞こえたならいいんだが、そんな都合のいいことが起こるはずもなく、俺は現実を受け入れなければならなかった。
「「……奏真くーん、今の声だれかなー?」」
目の前で2人が普段とは違う呼び方で俺の名前を口にする
2人の顔をみるとニヤニヤと遊びがいのあるおもちゃをみつけた子供のような表情をしていた。
「説明してくれるよね、友人である僕には」
「もちろん私にもだぞ! あとお菓子とジュースも!」
もうどうにでもなってくれ……
そう思いながら俺は2人を家の中に招きいれた。
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【あとがき】
お読みいただき誠にありがとうございます。
明日もお楽しみに!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
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