第2話 現実(リアル)でははじめまして、奏真さん
「つ、月城レヴィア……!?」
目の前に立っている女性は、昨日俺がプレイしていたゲームの登場人物に瓜二つ——
——いや、そんなレベルじゃない、見た目や声、喋り方、その他もろもろ、どうみてもゲームでみた月城レヴィアそのものだった。
「はい! やっと会えましたね奏真さん」
レヴィアはニコリとした表情で俺の顔をみていた。
この表情はゲームで何度も見ていた。
……その度に俺はにやけていたのを思い出す。
たぶん、ものすごい気持ち悪い顔をしてたにちがいない。
「奏真さん?」
「うわっ!?」
レヴィアは俺の顔を覗き込むようにみていた。
あまりにも近くだったので、俺はおもわず尻餅をついてしまう。
「す、すみません、大丈夫ですか!?」
レヴィアは俺に手を差し伸べていた。
「ありがとう……大丈夫だよ」
レヴィアの手を掴んで体を起こす。
……ってか何もに手に触れたんだけど、すげー柔らかい!?
「……あの、奏真さん?」
「え?」
「えっと……」
レヴィアは顔を赤らめながら自分の手を見ていた。
俺も視線を同じ方へ向けると……
「あ……」
あまりにも良い肌触りだったのでずっと彼女の手を握っていたのだった。慌てて手を離す。
と、同時に俺はその場に正座して勢いよく頭を下げていた。
「ご、ごめん! 気持ちよかったからついつい!!!」
「ち、違うんです! 恥ずかしがっただけで、嫌とかじゃなくて……」
レヴィアも勢いよく頭を下げ始めていた。
しばらくお互いがお互いに謝罪すること数分。先に冷静になったのはレヴィアだった。
「そ、そういえば奏真さん!朝ごはん食べましたか!?」
そう言ってレヴィアは持っていた袋を俺に見せる。
袋には近所のコンビニのロゴが載っていた。
寝起きで何も食べていなかったので、もちろん空腹状態。
そんな状態で袋の中に食べ物があることがわかればこの後起きることは一つ。
俺のお腹から食べ物を欲する音が鳴り出す。
それにしてもタイミングいいな、我が胃袋よ。
音を聞いたレヴィアはふふっと笑っていた。
「それじゃ一緒に食べましょうか」
そう言って家の中に入ろうとすレヴィア。
「ちょ、ちょっと待って!」
入ろうとするレヴィアを止める。
レヴィアは不思議そうな表情で俺の顔をみていた。
「どうしましたか?」
「ごめん、ちょっと待ってて!」
玄関のドアを閉めてから俺は急いで家の中に戻っていく。
「昨日掃除したからそこまで汚れてない、PCの電源は切ってある。
変な雑誌はこの前アイツに送り付けたし、シンクも汚れてない…」
部屋中を確認して、リビング以外のドアを全て閉めてからレヴィアのいる玄関に向かう。
「お、おまたせ! 上がって大丈夫だから!」
「はい、お邪魔します」
サンダルを脱いで俺の家にはいるレヴィア。
……ってか女を家に入れるの初めてじゃね!?
初めてのことで興奮しそうな気持ちを抑えながら俺はレヴィアをリビングに案内する。
「悪い、飲み物こんなのしかないけど」
冷蔵庫から麦茶が入ったポットとコップを取り出して、ダイニングテーブルに備え付けの椅子に座るレヴィアに渡す。
「ありがとうございます」
軽く頭を下げながら礼を告げるレヴィア。
……にしてもゲームの時もそうだが、すごく礼儀正しいな。
俺なんかに敬語なんか使わなくてもいいのにな。
「適当に手に取ったものを買ったので何が入ってるかわからないですけど」
レヴィアは袋の中身を取り出してテーブルの上に置いていった。
テーブルには菓子パン、おにぎり、サンドウイッチなど多種多様の食品が置かれていった。
俺は目の前にあったツナマヨおにぎり、レヴィアはクリームパンを取って食べていく。
黙々と食べながらも目の前の椅子に座るレヴィアを見ていた。
さっきは驚きと謝罪で気づかなかったが、ものすごく違和感を覚えていた。
「……奏真さん?」
スラっと伸びた青いロングヘアー
レヴィアにぴったりな爽やかさを醸し出す白のワンピース
俺の目に映るレヴィアはゲームで見た時と変わりない姿だ。
一部を除いて——
「どうかしましたか?」
俺は手に持ったおにぎりを頬張りながら一部分を見ていた。
……あらかじめ言い訳をさせてもらうと、色々と多感でそういうところが気になっちゃう男子高校生だから仕方ないことだ。
「ひゃっ!?」
どうやら俺の視線に気づいたようで、レヴィアは両手で胸元を隠していた。
そう、気になっていたのは大きさだった。
ゲームの時はそれなりに大きかった気がした
……まあ、他のキャラで大きいというかでかすぎるキャラがいたから
それと比較すると小さい部類にはなるが。
「……奏真さん、どこ見ているんですか!」
顔を真っ赤にしながらレヴィアは俺の顔を睨んでいた。
「いや……画面で見た時と大きさがちがうと言うか……」
どう答えようか悩んでいるうちに口籠もってしまう。
「わ、私と奏真さんは恋人同士ですけど、そんなに日が経ってないのにそ、そういうのを求めるのはどうかとおもいますよ!」
レヴィアは更に顔を赤らめていた。
……っていうか今、恋人って言った!?
「こ、恋人!?」
あまりの驚きに俺は思っていることが声ででてしまう。
「そうですよ! だってあの時そう言ってくれたじゃないですか」
「あの時……?」
「学校で2人きりになった時、私が聞きましたよね?」
おそらくゲームの時の話だと思うが
学校で2人きりにレヴィアが言ったのは……
——私とどんな関係になりたいですか?
思い出した俺は頭を抱えていた。
この後にテキストで自分の気持ちを入力したんだった。
「奏真さんはあの時に私に『恋人になってほしい』って言っていましたよね?」
……はい、言いました。恥ずかしさで全身汗だくになりながら
テキスト入力しましたよ。
というか、声にだされて言われたら汗が吹き出そうなんだけど
「……それともあれは嘘だったんですか?」
レヴィアは先ほどまで顔を真っ赤にしていたのが嘘だったのかと思えるぐらい変わって、まるで絶望しかないような表情が変わっていた。
「そんなわけないだろ! もちろんあれは俺の本心だ!」
いくらゲームの中だったとはいえ、俺は月城レヴィアに恋をしていた。
……だからあのテキストを入力するときに相当悩んだわけだし
「それじゃ、もう一度言ってくれませんか?」
レヴィアは俺の顔をじっと見ていた。
「今度は奏真さんの声で聞きたいです」
……え? マジ!?
テキスト入力するだけでも緊張したっていうのに
自分の口からあのセリフを言わなきゃならないの!?
ただ、先ほどのレヴィアの顔を見た後では冗談でもそんなことを
言える雰囲気ではなかった。
俺は目の前のコップに麦茶を注ぎ、一気に飲み干す。
そして、震えた声でこう答えた。
「お、俺の恋人になってほしい、俺はレヴィアが好きなんだ」
その言葉を聞いたレヴィアは和かな表情となっていた。
「私もですよ、奏真さん。 そのために私はここにきたんですから」
レヴィアも恥ずかしかったのか、若干顔を赤く染めていた。
やばい、マジで可愛んだけど……!?
俺は麦茶を飲んだばかりだというのに一瞬にして喉の奥の渇きを感じたのでもう一度コップに麦茶を注いで一気に飲み干してた。
「それはそうと、奏真さん」
「な、なに……!?」
「私の胸の大きさは変わっていないですから! 大きく見えたのは奏真さんのPCのディスプレイが大きかったからそう見えただけなんです! いいですね!」
レヴィアは力強い口調でそう告げる。
ここは謝るところなんだけど、ごめんレヴィア……
——顔を真っ赤にして主張しているレヴィアがものすごく可愛くて悶えそうなんだけど。
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【あとがき】
お読みいただき誠にありがとうございます。
ある程度、時間に余裕ができましたので
本日より、毎日更新をやっていこうかと思います。
※色々と事情でできなくなる可能性もありますがその際はご了承ください
更新した際は、近況ノートやTwitter等でご連絡させていただきます!
お楽しみに!
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