第3話 お出かけしませんか、奏真さん


 「奏真さん、片付けは私がやりますからゆっくりしててください」


 レヴィアが買ってきた朝食を食べ終わってからは、まったりとリビングで寛いでいた。

 ってか、レヴィアが買ってきた食べ物ほとんど俺が食べちゃったんだが平気だったのか?洗い物や片付けなどやってくれてるし。


 「ふふふ〜ん♪」

 

 レヴィアは上機嫌なのか鼻歌混じりに使った皿やコップなどを洗っている。女性が俺の部屋にいることですらSRを超えたSSRクラスなことだが、今回はそれ以上になるのかもしれない。


 ——今のレヴィアはエプロンを身につけている。


 白いワンピースに薄緑の無地のエプロン。

 たしかここに引っ越しをした日に親が買ってきたやつだ。

 面倒だったのでつけることほとんどなかったが、まさかここで最高級のアイテムになるなんて誰が想像したことか!


 俺の目の前にいるレヴィアはSSRではない!

 URレヴィアだ! これで勝つる!


 「奏真さん……?」


 レヴィアの声で一気に現実に戻される。

 目の前のレヴィアはジト目で俺を見ていた。先ほどまでつけていたエプロンは外したようで冷蔵庫の横にあるフックにかけてあった。

 

 「もう、ずっとニヤけていましたけど、また如何わしいこと考えていたんですか!」

 「またって……そんなこと考えてばかりじゃないんだぞ!」 

 「じゃあ、一体何を考えていたんですか?」  


 ……レヴィアのエプロン姿

 って言おうと思ったが、急に恥ずかしくなって口籠もってしまっていた。


 「やっぱり、如何わしいこと考えていたんですね……」  

 「だあああああ!! 違う! レヴィアのエプロン姿がいいなって思ってたんだよ!」 


 勢いに任せて思っていたことを伝えるとレヴィアは黙ると同時に顔から湯気が出そうなくらい顔が真っ赤になっていた。


 「そ、そうなんですか……! う、嬉しい……です」


 レヴィアは下を向いて消えそうな声で喜びを口にしていた。


 ……あぁ、やばい。何から何まで可愛すぎじゃねーか!?




 「奏真さん、お出かけしませんか……?」


 しばらくの間、レヴィアは「うぅ〜」とか「あぅ〜」など

 赤ん坊のような声しか発していなかったが、ようやく落ち着いたのか、まともな言葉を発せられるようになっていた。


 「いいけど、何を買うんだ? それによって行く場所が決まってくるけど」

 「今日の夕飯の材料でしたり、雑貨品を買うのもありますけど」

 「……けど?」 

 「奏真さんと、おでかけしたいなって……」


 またもや、レヴィアは顔を真っ赤にしていた。

 それをみていた俺の顔はコマンドを入力したら火がでるんじゃないかってぐらい熱くなっていた。 

 

 ——今日何回言ったかわかんないけど、何この可愛い生物!?




 「荷物取ってきますので、ちょっと待っててください」


 そう言うとレヴィアは外に出ていく。


 「えっと、バッグは……あれ? どこにいれたかな?」


 すぐに隣で何かを開ける音やレヴィアの声が聞こえていた。


 「……レヴィアの家ってもしかして」

 

 外に出て音がする隣の部屋の玄関を見ると、『Tsukishiro』と 書かれたネームプレートが貼られていた。

 どうやら彼女の家はここのようだ。ここからでも何かを開ける音やレヴィアの微かな声が消えてきていた。


 「お、おまたせしました!」

 

 少しして、レヴィアの部屋の玄関が勢いよく開く、

玄関の奥には部屋の中で動き回ったのか若干息切れをしたレヴィアが。

 見た感じおしゃれな感じのベージュの麦わら帽子をかぶり、肩には紺とオレンジが基調のトートバッグが抱えられていた。


 外に出たレヴィアは玄関を閉めて鍵をかける。

 閉まっていることを確認するとこっちを向き、和かな表情で俺の顔を見ていた。


 「それでは行きましょうか、奏真さん」


 

 住んでいるマンションを出ると眩しい日差しと熱気が辺りを包み込んでいた。マンション内はそこまで暑さを感じないかったが、外にでた途端全身から汗が噴き出してきていた。


 俺やレヴィアが住んでいるのは都心部から離れた郊外にある明星市と呼ばれるところで、離れているが海がありので海風で多少は涼しくなるのだが、今年の夏の暑さは海風ではカバーしきれないほど異常な暑さのようだ。


 「奏真さん、どこへ向かうんですか?」

 

 俺の横で並行して歩いているレヴィアが俺の見ていた。俺のお腹ぐらいまでの高さしかないせいか、見上げるように見ているのがまたグッとくておもわずガッツポーズを取ろうとしてしまう。


 「無難なのが、駅前のショッピングモールかもな、食料品とか雑貨とか何から何まで揃っているし、それに……」

 「それに?」 

 「この市内にある学校の学生証があれば学割適用されるし」


 この明星市は別名『学園都市』と呼ばれ、市と市内にある複数の学校が出資して作られた区域となっている。

 学生が何不自由なく勉学に励むことができる場所というコンセプトで作られたとか。

 

 そのため、学生たちが住んでいる寮もボロボロの建物や狭い部屋で複数人が住んでいるなど大半の人がイメージするものとは違い、全て高級マンションクラスの建物になっている。全部屋が2LDK以上、空調完備。それに伴う費用も全て市が負担といった至れり尽くせりな環境なのである。


 「学生証ってこれのことですよね?」

 

  レヴィアはバッグからスマホを取り出して専用アプリを起動させて

 学生証の画面を表示させる。   

  画面には学校名と気難しそうなレヴィアの顔が映されていた。


 「レヴィアって『千年原学院』だったのか」

 「はい、といっても9月から編入なんですが」 

 「なるほど……」


 元々ゲームのキャラクターであるレヴィアがどうやって編入できたのか気になるところだが、こんな時にそんなことを聞くのは野暮だろう。

 ってか今は彼女と一緒にいるのが楽しいからそれでいい!


 「そういえば、奏真さんの学校は……?」 

 「あー……」 


 俺はズボンのポケットからスマホを取り出して、レヴィアと同じように

 専用のアプリを起動してからレヴィアに見せる。

   

 「御子神学院ですか……?」


 レヴィアはスマホの画面をじっと見つめていた。


 「そうだよ、千年原学院の姉妹校だな」

 「そ、そうなんですか?」

 

 俺の通う御子神学院と千年原学院は姉妹校になる

 入学時の話では合同で何かイベントなど行うことがあるようだ。


 俺の話を聞いたレヴィアは残念そうな顔をしていた。


 「どうしたんだ?」


 「一緒の学校じゃないのは残念だなって……でも、学校が終われば一緒にいることができますからいいですよね……?」


 レヴィアは苦笑いをしながら話していた。


 ……何でこの子はこんなに可愛いんだ!?

 俺をこんな気持ちにさせてどうしようって言うんだ!


 心の中で声にならない雄叫びをあげながら俺は一人右手を天に突き刺すように振り上げていた。

 

 「奏真さん……? ど、どうしました……?」


 隣でレヴィアが驚いた顔で俺を見ていた。

 まあ、隣にいる奴が突然腕を振り上げたらこうなるよな…… 


 「何て言うか、嬉しさのあまり天に帰るような気分になったと言うか……」


 何を言っているんだと、自分で自分に問いかけたくなる内容だが、聞かされた本人はふふっと微笑み返す。


 「……とりあえず、早くショッピングモールに行こうぜ!」


 そう言って俺は走り出していた。


 「奏真さん、待ってください! いきなり走らないでくださいー!」 


 ——あぁ、これが青春ってやつか


==================================


【あとがき】


お読みいただき誠にありがとうございます。


明日もお楽しみに!


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

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