肝試し
大学二年生の秋に、中学時代の友人から「面白い話がある」とメールが届いた。
どうやらコイツも俺と同じく大学生活を満喫しているようなのだが、この夏休みの間に大学のサークルで合宿があり、そこで肝試しを行ったというのだ。
肝試しの内容は合宿所の近くにある廃寺から、何でも良いから物を拾ってくるというものだった。
場所がへんぴな山奥だったこともあり、その寺はもう何十年も人の手が入っていないようで、雑草が深く生い茂って木々が伸びさらしになっていたそうだ。
そんな廃寺に一人ずつ入っていくのだが、みんなすぐに怖がって帰ってきてしまう。
というのも、寺の敷地を進んで行くと、おぎゃあ、おぎゃあと赤子の声が聞こえるというのだ。
最初は猫の声かと思ったが、どうやらそうでもないらしい。
次第になんだか体が重く感じられて、気味が悪くて引き返してしまったのだと、みな口を揃えてそう言うのだ。
とはいえ勇気のある人間もいるもので、四年の先輩が二人だけ廃寺の一番奥から物を持ってくることに成功したそうだ。
一人は細長い朽ちた木の板で、何か文字が書いてある。
もう一人は割れた壺を持ち帰って来た。
その二人はその場では勇気を称えられてヒーロー扱いされたが、合宿から帰ったとたんに熱を出して二週間寝込み、そのまま死んだという。
そして友人も後で知った話らしいのだが、この土地では飢饉のたびに口減らしが盛んに行われており、赤子の霊を見た者には祟りがあると言われているそうだ。
おそらく二人が持ち帰って来たのは卒塔婆や骨壺の類で、きっとそれが悪かったのだろう。
メールはそう締めくくられていた。
これが祟りなのかはさだかではないが、この体験を「面白い話」だと感じた友人が、俺は怖い。
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