通勤電車

遅くまで仕事をした帰り、クタクタに疲れ切った体で電車に乗っていた時のことだった。

走る列車の窓からぼんやりと外を眺めていると、突然、青白い顔をした若い男が窓の外にべたりと貼りついてきた。

車内の光景が窓ガラスに反射したのかと思ったがそうではないらしい。

その男は確かに走る列車の窓の外側に貼りついている。


男は私の顔を見てニタニタと笑っていた。

その顔はどう見ても生きている人間のものには思えず、私は大きな悲鳴を上げてしまった。

窓から目を離して車内に向き直ると、他の乗客たちは全員こちらを見ている。


その乗客たちの顔は、全て窓に貼りついていた男と同じ顔だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る